俺がこんなに驚いたのは初めてだ。
こんなに自分に似てる奴がこの世に存在したなんて。
それがあの、YUだなんて。



肆拾弐



「で、さっきのはどういうつもりか説明してもらおうか、神田。」

「ユウ!ちゃんになんかしたんさ?ガキはほっとくてきな態度とってたのに…!」

「したのはてめぇだろうが!!」

「イーヤーッ!!蹴っちゃいやーっ!!」


とりあえずオレンジの髪のやつは地に静めた。
あれだけしつこくに手を出すな、と言っておいたのに。
目をハートにしてデレデレしながらの手を握りやがって。


「で、説明してもらおうか。」

「僕もに手を出すのは許せませんから、地に沈めるなら協力します。」

「モヤシなんぞに手伝ってもらわねぇでもコイツくらい潰せる。」


俺は、その辺のヤツとは格が違う。
ここで何年もを守ってきたのだから。
いや、そうじゃない。
俺も幼い頃から教団に連れていかれて、そして。


「兄さん…?」

「あ、おはよ。」

「えへへ、おはよ。」


妹が起きた。
これから起こる未来を全く知らない幼い妹。
可愛い、可愛い、俺の妹。
知る必要はない。


「オレンジ。」

「ちゃんとラビって呼んでほしいさ!」

「てめぇなんぞウサギで十分だ。」

「はじめはラビって呼んでたじゃんか!」

に手を出したから。」

「えー!?」


そのとき、家の周りに違和感。
何年もやっていると嫌でも分かってしまう。


「ちょっとのこと見てろ。」

「へっ!?」

「モヤシも。」

「だから、アレンですって!」

「ラビくん、アレンくん、お家であそぼ?」

「うん、なにしよっかー。」

「お絵かきしましょう。」


家の中なら外よりもずっと安全だ。
畜生、こんな時に来やがって。


「神田。おまえ、二体壊せ。」

「AKUMAか?」

「そうだ。」


せめて、生きている間は、俺が守ってやる。


「レベル2が4体か。」


だからどうか、どうか、俺が死んだあとは、


「雷撃波。」

「界蟲『一幻』」


守ってくれる人を、探してくれ。


「お前、嫌い。」

「俺も嫌いだ。」


自分そっくりな人間を好きな奴はいない。


、泣いているだろ。」

「だから嫌いだ。」


嫌いな理由は、そっちだったか。


「お前、親父の隠し子だって落ちはない?」

「他人だ。」

「だよな。それに、お前、セカンドだもんな。ったく、なんでこんなに似てんだよ。」


セカンド、と言う言葉に、眼光が鋭くなった。
禁句だったか、それとも、何故知ってる、か。


「正直驚いた。」


俺に似ていることも。
セカンドがまだ生きていることも。


「頼んだ。」


本当は、ずっと俺がそばにいたい。
しかし、それは無理のようだから。


「お前、のこと好きだろ?」


もお前が好き。
だったら任せてもいい。


「だからなんだ。」

「守れよ。絶対に守れ。昔から千年公…伯爵な。あれが何故かわからねぇけど、ずっとのこと狙ってるんだよ。絶対渡すな。」


が、あちら側を選ぶなら別だ。
俺は選んで欲しくないが、それならばそれでもいい。


「あ、二人とも、ここにいたの?ただいま、神田、兄さん。」


可愛い、可愛い、俺の妹。
どうか、ずっと笑っていて。
ずっと、ずっと笑っていて。
そんな場所を俺は作ってあげられなかったけれど、いつか、そんな場所を見付けて。



NEXT


反省。

兄貴視点のお話でした。
神田と兄貴は似たもの同士…のはずなのです。
でも、精神年齢は兄貴のが高いです。
でもって、千年公が何故、主人公を狙うかは後ほど連載の最後の最後のエピソードにでてきます。

瀬陰暗鬼。