書庫で私は不思議な本を見つけた。
それが私にたくさんの物を与えてくれた。



肆拾壱




「ごめんね、。手伝わせちゃって。」

「いいよ。今日は暇だったから。」


現在、リナリーの手伝いをしている。
コムイや科学班の人たちが溜め込んでいた資料を書庫にしまう、という単純作業。
今日は久々に医療班の仕事がなく、私はオフである。
リナリーは任務も行き、科学班の手伝いもしているので、基本的に任務に行かない私よりも労働量が多い。
だから、今日は私がリナリ―の手伝いをしている。
少しでもリナリ―の仕事を減らそう、という僅かなたくらみだ。
そうしたら、ゆっくりリナリ―と話しながらお茶をする時間が出来るかもしれない。


「こっち、片付け終わったよ。」

「こっちも終わったよ。お疲れ様。」

「ね、神話コーナーに行きましょ。最近ね、はまっているの。」


女の子って神話とか占いとかそういう類のものが好きだ。
勿論私も嫌いじゃない。


「ローマ神話、ギリシャ神話、日本神話…いろいろあるんだ。」

「そうだね。それより、どうして神話に?」

「私達にイノセンスを与えた神はどれかなあって…。」


なんとなく、ではなくいちばん身近な理由。
イノセンスは神の結晶と呼ばれている。
そして、エクソシストは神の使徒。
ならば、それを選んだ神様というのがどこかにいるはず。
それは一体、どんなものなのか、確かに気になる。
だけど、私自身は、あまり考えた事が無かった。


「あまり好きじゃないね。」

「え?」

「私は神様、好きじゃない。」


神様がいるのなら、私を選んだ理由を聞きたい。
なんとなく、で選ばれたならたまったもんじゃない。
神話の中からどれを読もうかと悩んでいるリナリーの横で私も何かを読もうかと手に取ってみる。

たくさんの本の中に一冊だけ心が惹かれる本があった。


?」

「この本…」

「タイトルが…」


タイトルがない、本。
どこか、不思議な感じがする。


「リナリーと?」

「あ。ラビ、これ見て。」

「タイトルがないさ。」


ラビは此処の本のほとんどを読んでいるらしいが、この本は初めて見たそうだ。


「ラビ、目当ての本は見つかりました?」

「アレン、これを見るさ。」


アレンも初めて見た様で驚いていた。


「中は見ました?」

「ううん、見てない。」


開かないほうがいい。
そんな気がした。


「何やってんだ?」

「ユウ、これ開いてみ。」

「本?」

「タイトルがないの。」

「消えたんじゃねぇの?」

「タイトルって消えるものなの?」


ただでさえ、見た目は新しそうな本。


「じゃんけんで決めるさあ!!!」


結局運任せ。


「じゃあ、見ますよ。」


じゃんけんに負けたのはアレン。
アレンが本を開いて目を丸くした。
覗き込むと、本の中は真っ白。
これではただのメモ帳。


「白…?」

「文字がない。」

「本じゃないね。」

「変な本さ。」


何かがおかしい。
どこか空気もおかしい。

そのとき、本が光を放ち始めた。


「え、」

「夢みたい。」

「何が起こるんですか?」

「ちっ…」

「本が光ったさー!!!!」


本が光り輝き、私達はその光に包まれた。



NEXT



反省。

これからエンディングへの道が始まります。
この本、ネタ晴らしするとイノセンスの一種です。
あ、そうそう、もう一つ。

瀬陰暗鬼。