笑った顔が脳裏に焼きついてはなれない。
参拾漆
「かーんだくーん♪」
「ユーウー♪」
うるせぇのが二人、来た。
「コムイから聞いたさ!にプレゼントしたんだって?」
「殴り書きのメモつきで。」
どうやらが砂時計の差出人を探しているらしい。
その経過で一番いろんな人の字を見ているコムイに殴り書きのメモ用紙を見せたようだ。
そして、俺はコムイに絡まれている。
コムイはどうやら俺に絡むためにに心当たりを言わなかったようだ。
それは感謝してやろう。
「砂時計じゃなくてアクセサリーにすればいいのに。」
「でも、あの砂時計はっぽかったさ。」
いや、やっぱりからかわれるのは腹が立つ。
「ちゃんのこと、未だにって呼んでるし。」
「ユウはシャイボーイなんさ!!」
「ああ、シャイボーイね!!ついでにへたれもつけちゃおう!」
「鈍感もつけるべきさー!」
好き放題言いやがって、今に見てろ。
「でも、あのメモの意味は?」
「Forget. 忘れるだよな?」
意味までこいつらに話す必要はない。
ただ、砂時計の迷信の様にに辛い過去を忘れて欲しかった、ただそれだけだと思う。
「ねえ、何の話してるの?あ、神田に聞きたい事があるの。」
コムイとラビがにまにましている。
ああ、本当にうっとおしい。
「あ、ごめん。話の邪魔だった?今、大丈夫?」
俺が答える前に、ラビとコムイが俺は暇だとか自分は忙しいとか明らかに嘘っぽい事情をつけて去って行った。
此処にはと俺の二人っきり。久々だ。
「あのね、この砂時計、私の部屋の入口にあったんだけど、誰ものか知らない?」
知らない、と言ったらが一生送り主を見つけることはない。
無言で静かな空気が流れる。
緊張感が漂う。
口を開いたのはだった。
「知らないならいいの。ただ、どうしてもお礼を言いたくて…」
お礼を聞くぐらいならいい。
だけど、どうして、などと言われたら困る。
「…神田?」
忘れて欲しい、と思ったのは嘘じゃない。
「…辛い事、全部忘れたらいい、と思っただけだ。」
が目を丸くした。
俺から、とは思っていなかったのだろう。
「これ、神田だったの?」
「要らなかったら捨てろ。」
「…いらなくなんてない。……ありがとう、神田。」
泣き顔が、笑顔に変わったならそれでいい。
それ以上は望んでなんていない。
「これ、嬉しい。メモも、嬉しかった。…私が泣かないようにって考えてくれたんでしょ?」
は笑った。
それは、苦笑だった。
「でも、兄さんのことは忘れたくない。忘れられない。辛かったのは確かだけど、楽しかったり幸せだった時だってあるから。」
忘れろ、というのは泣くくらいなら、という意味で置いた。
が泣かないならば、忘れる必要はない。
「それじゃあ、私はこれで。」
談話室からが去った。
さっきの笑顔が脳裏に焼きついてはなれない。
「ユウ、顔真っ赤さ。」
「うるせぇ。」
ありがとう、と笑ったその顔が見たかった。
ただそれだけだった。
なのに、どうして、こんなに…
熱い。
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反省。
あの人はそう無視で行きます。
瀬陰暗鬼。