見た瞬間あいつの顔が浮かんだ。



参拾伍



「ユウ!!俺、これ欲しいさー。」

「テメェで買え。」


めったに買い物なんかしねぇのにラビに連れられて買い物に来た。
特に欲しいものもねぇのに。


「アクセサリーだって!あ、これかわいい。」

「だからどうした。」


どれもいまいちぴんとこない。


「これ、リナリーに似合うとおもわねぇ?」

「どうでもいい。」

「ユウはにメロメロだもんなあ♪」

「殺されてぇか…?」

「え、ユ、ユウ、落ち着け。抜刀はよくねぇさあ……ギャーッ!!!」


とりあえず、地に沈めた。馬鹿ウサギはいつもいつもうっとおしい。
ふと横を見たら真っ白い砂が入った変なものがおいてあった。
それを見た瞬間、の顔が浮かんで、それから目を離せなくなった。


「お、砂時計じゃん。」

「なんだそれ。」

「ユウ、しらねぇの?時間を計れるんだよ、これ。これを逆さにしてさ、砂が落ちきったら何分!みたいな。」


ラビが逆さにした砂時計はさらさらと小さな音を立てて下へ落ちていく。


「砂が白いってだけでこんなに綺麗に見えるんだなあ。ってユウ?これ、気にいったんさ?」


砂が落ちていく光景は何かが灰になって崩れて行くような感じがした。
大切な物が崩れ落ちて行くイメージ。


「これ、っぽいさ!そうおもわね?」

「………。」

「って、無言かよ!」


だから、が浮かんだのかもしれない。
あいつは全部かかえて、全部捨てられなくて、何一つ壊せなくて。
だからこそ、にはこれが似合うと思う。


にプレゼントってどーよ。」

「誰がするか。」


似合う、が自分が渡すとなればまた違う。
そんな事軽々しくできるわけがない。


「ユーウーいいじゃんか、買って行こうよー。」

「うるせぇ。」


ラビを一蹴して、その場を離れた。
未だに落ちる砂はきらきらと光っていた。




*



「あれ?二人でお出かけ?いいなあ。」


戻って一番初めに会ったのはだった。


「そ、俺とユウはいつでもラブラブさー。」

「殺されてぇのか?」

「え、遠慮します!!」

「今度は私も誘ってね。」


脳裏に浮かんだのは砂時計。


「って、ユウ!どこ行くんさ。」

「修練場。」

「ちょ、ちょっと!怪我しないでね?」


の顔をもう一度見て、決心した。



その後、修練に身が入らず、再びさっきの砂時計の前にいた。


「兄ちゃん、買うかい?この白い砂はな、時とともに嫌な事を忘れさせてくれる力があるんだぜ!お得、お得!!1ギニーでどうだ?」


嫌な事を忘れる。
この砂時計を見て、砂の様に何かが崩れてしまえばいいと思った。
きっと、忘れたらいい、と思ったんだと思う。
あいつが、が、兄貴の事を忘れたら、と思ったんだと思う。


「もしかして彼女へのプレゼントかい?」

「違う。」

「ちなみに彼女へのなら指輪とかどうだい?」

「違うっつってんだろ。」


ろくでもない店主を一蹴して、金を払った。
手には綺麗に包まれた箱。


「ま、兄ちゃんがんばれよー。」


もう一度店主を一蹴しておいた。




Forget.

とだけ書いた髪を添えて部屋の扉にかけておいた。
忘れろというのは酷なのだろうか。




NEXT



反省。

砂時計に1ギニーは高いよ!!!!!!!
ぼったくりだよ!!!
まあ、ユウちゃんはわかってなかったでしょうけど。
砂時計はあるのイメージで次の話を書きたかったのでどーしても欲しかったんです。

瀬陰暗鬼。