03.治癒と炎と水と
「あ、犬が倒れてる?」
可哀想に・・・でも、生物はやがて死ぬ。
それが定めだと思う。
だから、別に助けたいとは思わないなあ。
「どいてください!!」
女の子が犬を抱きしめた。
少し光ってる・・・?
「大丈夫です。」
犬が元気になった。
あれは・・・私と同じ、治癒の力なの・・・?
あんなに犬の血で汚れて、あれじゃあ、その辺、歩けないじゃない。
って、男の子も居たんだ。
姫と忍びって何?時代錯誤ってやつだなあ。
それよりも、血だらけのまま、どこかに行こうとしてるよ!?
あの男の子は馬鹿・・・?
「そこの二人、ちょっと待って。」
「ほへ?」
「誰だよ、あんた。」
男の子はすごく警戒してる。
「えっと・・・うーん・・・通りすがりのものです。犬が倒れててその犬をそこの女の子が治癒していたところを見てたの。」
「あ、あの・・・」
「誰にも言わないよ。言う必要がないでしょう?それよりね、その大量に血が付着した制服で歩き回るのはよくないと思うよ。」
「あぁっ・・・クリーニングに出さなくちゃ・・・。」
面白い子だなあ。
私は犬を助けたいと思わなかった。
定めとも思ったけど、それよりも、人がたくさんいて、この力を見られるのが嫌で、助けられなかったんだ。
この子は戸惑うことなく、犬を助けた。
きっと強い子なんだ。
「動かないで。」
私の水の力はなんにでも使える。
制服や手に付着した血を洗い流すことはとても簡単。
でも、集中しないと必要以上に濡らしてしまう。
付着していた血は思ったよりも簡単に流れた。
「はい。見物料ってことで。」
「すげー!!」
「あの、ありがとうございます!!どうやったんですか!?」
あれ・・・?
興味をもたれちゃった・・・。
「ここでは話せない。人が多すぎるもの。」
「じゃあ、あんたも一緒に来いよ!な!姫♪」
「はい!行きましょう?私、佐古下柳です。」
「私は、。二年だよ。」
「年上ですか!?」
「敬語は要らないよ。よろしくね、柳。」
「うん♪よろしくね!!!」
「俺は、花菱烈火。姫の忍びだ。」
烈火・・・?
何処かで聞いたことがある名前・・・。
でも思い出せない・・・。
この人はなに・・・?
___________
「何ここ・・・?」
「まっ暗なとこですね。」
「何のために?」
「まだ外は明るいからな!こーゆートコじゃねーと・・・」
花菱が取り出したのは花火。(しかも大量)
「花火にならない!!」
コレが見せたいもの?
私、いる意味ないじゃない。(別のものを期待していた。)
「あら?いま時分花火!」
「ウチ花火屋なんだ!」
花火屋に知り合いなんていない。
やっぱ気のせいかな・・・。
「さて!とくと御覧あれ!花菱烈火、とっておきの隠し芸です。」
そういって腕から出せれたのは炎。
その炎で花火に火をつけて柳に渡す。
幻影じゃない・・・本物の炎。
キンッ・・・・
頭が急に・・・ッ・・・・
痛い・・・何なのよ・・・・
『主よ、我が名は白蛇。そなたの水の力の源だ。今はここまでしか話せぬ。
今晩にでもゆっくり話そう。そなたが最近見ている夢の話もしなくてはならないな。今回はこれくらいにしておこう。
また、後ほど。我が、主、。』
何・・・?
頭にじかに聞こえてきた声。
誰・・・?
白蛇・・・?
しろへびのこと・・・?
わけわかんないよ・・・。
「ちゃん?」
「どうしたの?」
「いえ、花菱君のやつ、すごいですよね!!」
「うん。」
「生まれつきだそうです。」
「私のもだよ。」
ぴちゃん・・・・
「水!?」
「うん。私のも生まれつき。花菱のとは対照的な力ね。」
「素敵です!!」
素敵・・・?
本当に・・・・?
「お互いナイショのお話をしたんですから、私たちもうお友達ですね。」
「お・・・おうっ、」
「ちゃんも!!」
「うん。友達ね。」
私、ここに来てよかった。
今、そう思うよ。
一日に3人友達が出来た。
本当の友達。
「ただし!佐古下は『姫』で、俺は『忍者』!!そーゆートモダチだ!!」
「はあ。」
「じゃあ、私は?」
「そーですよ!!ちゃんは!!」
「うーん・・・考えとく!!」
「えー!!花菱くん、だめですよぉ!!」
「別にいいよ。くの一なんて言われても困るしね。」
「今、それ考えてたのに!!」
「嫌。」
―見・・・つけた・・・
視線を感じた。
誰?どこから?
何かすごく見られている感じ。
嫌な感じ。
カツン・・・
女の人だ。
誰だ?でも、さっき感じた視線はこの人のものだ。
「おばさん、誰?」
「ダ、ダメです花菱君!あれくらいのひとにおばさんっていっちゃ!」
「そ、そっか!」
二人とも観点ずれてません?
「お姉さんもいっしょに花火しません?」
誘ったらまずいでしょ!?
なんか、この人やばい。(勘だけど)
「いま、火を出したわね。坊や。おばさんもう一回みたいわぁ・・・・お願いしてもいいかしら坊や・・・あなたの炎を見せて頂だい。」
見られてた。
確実に見られてた。
ってことは、私の水も・・・?
かなりまずい状況。
『主、あの女は敵ではない。炎の童にここは任せろ。』
え・・・?
また、白蛇の声。
―あなた、なんなの?でも、あなたの言うこと信じてみるわ。ただし、ちゃんとあとで説明してもらうからね。
『御意』
あの人は敵ではない・・・
白蛇とかいうやつはそういってるけど、私にはそうは見えない。
「!逃げっぞ!!」
「烈火、ナイフ!!」
「なっ・・・・ぐあああああっ・・・」
「花菱くん・・・」
白蛇、我慢できない。
ぴちゃん・・・・
「水音?」
「見てたんでしょう?私は優しくない。友達を傷つけられて黙ってなんかないから。」
「何故・・・?」
「え?」
「何故あなたがここに・・・?」
「私のことを知っているの?」
「この印に見覚えがあるでしょう。」
ズキン・・・
頭が痛い。
何・・・?
いろいろなものが流れこんで来る・・・何これ・・・?
映像・・・?
何を喋っているの?
髪が銀で目が蒼の女性・・・身内なの・・・?
「ちゃん?ちゃんっ!!」
柳が呼んでいる・・・立たなくちゃ・・・。
烈火の傷を私が治せば二人は逃げられる。
でも、頭が割れるように痛い。
―ごめんね、柳、烈火。
_________
「、!!」
誰・・・?花菱・・・?
私、気絶していたんだ・・・。
「花菱・・・あの人は?」
「影法師って言うんだとよ。今日は引くって。」
また来る。そう言っているんだ。
「悪いな、起こして。姫を起こしたくなかったからよ。」
「いいよ。柳、怪我してるよね。これ、薬草?」
「俺、特製!!」
「はずして。」
「は?」
「いいから。」
私の中の治癒の力。
柳の怪我を治したい。
「姫と同じ力?」
「うん。そうだよ。私はコレで帰るわ。気を付けてね。」
「おう。あ、そうだ。ナイフのときみたいに、烈火でいいよ。花菱なんてよそよそしいだろ。」
「わかった。じゃあね。」
私が去った理由は一つ。
早く、一刻も早く、白蛇の話が聞きたかったから。
NEXT
あとがき
烈火と柳でした。
オリキャラもでてきましたね。
白蛇です。
はくじゃって呼んでください。(しろへびじゃないよ。
次回は完全オリジです。
もう一匹のオリジもでてきます。(もう一人じゃないんだよね。
一匹なんです。匹なんです。
瀬陰暗鬼