として 03.訪問者




「熊井さんって親父さんのこと尊敬してるんですね。」



なんか、隼人が大人っぽく見える・・・。(末期?)



「全然。でもなんだかんだ言って親父ってでかいよな。」



そうかな・・・でも、男の子って父の背中を見て育つって言うし。



「いや、家の親父は、口悪ぃし、だらしねぇし、すぐ手ぇでるし。」

「隼人そっくり。」

「違うっての。」

「お前にもそのうちわかるさ。」

「そいうもんすかね?」

「あぁ。」

























そのとき前方から変な人たちが来た。




















「誰?」

「お待ちしてましたよ。」

「熊井さん。こんなとこにいたの?」



あからさまに変な人たち。

吐き気がするほど気持ちが悪い。



「なんすか?あんたら。」

「隼人。」



私はとっさに隼人の制服をつかんだ。












関わらない方がいい。










本能がそう言ってる。
























嫌な予感がする。


















「矢吹!やめろ!!」



熊井さんも隼人を止めた。

何か、絶対裏がある。



「そろそろ例の件、いいお返事、聞かせてもらえますかね?」



例の件?

絶対おかしい。


逃げなきゃいけないって・・・でも、足が動かない。

せめて、小さい子を連れて・・・逃げなきゃ・・・



「言ったはずだ!!あの店は売らねぇって。」



売る・・・売らない・・・?

売買の話?







なら・・・













なんでこんなことになってるの?













武力行使としか取れない状況。








危ないよね・・・確実に。
















「そうですか。それは残念だなあ。」













やっぱり、武力行使だ。































「お!美人な姉ちゃんもいんじゃねぇか。」




















「や・・・さ、さわんないで・・・。」














。後ろに居ろ。」

「っ・・・・うん。」












気持ちが悪い・・・。







隼人が私を庇ってくれてる。
























でも、本当に庇う相手は私じゃなくて小さい子達。

































「熊井さん!!」





















熊井さんは殴られていた。

でも必死に弟君と妹さんを守ろうとして・・・。

隼人は押さえつけられていて・・・私は隠れてる状態。










私、何やってるんだろう。










何のために、護身法をお父さんに習ったかわかんない。














こういうときに使わないでどうすんの。











せめて、小さい子だけでも守らなくちゃ・・・。






































__________




























、平気?」



















「疲れちゃった。久々だったし。」

「すごかったな。」

「結局嘘ついたしね。」

「警察って言って逃げる程度でよかったな。」

「うん。」



本当疲れた。

護身法なんかめったに使わないし。



「矢吹、ちゃん、このことはヤンクミには言わないでくれよな。面倒なことに巻き込みたくねぇしさ。あいつのことだからこんな話聞いたら、黙ってらんねぇだろ?私が守ってやる。だから任せろ!とか言いそうじゃん。今、ヤンクミはお前らの担任の先公なんだからお前らのことだけを考えてなきゃ。」

「でも・・・。」

「俺、ヤンクミには本当に世話になったんだよ。これ以上ヤンクミに迷惑かける訳にはいかねぇっ!俺の事は自分の力で何とかするから。


















二人とも巻き込みたくねぇから、もう店にはくんなよ。」






































「嫌です!!」

































?」

ちゃん!?」

「私は明日も行きます。手伝いに行きます。」

ちゃん!!」

「明日もお昼から手伝うんで。では、また明日。」

!!」

「矢吹!お前はくんなよ。」

「っ・・・


















のこと、ちゃんと送るんで。」








































_______






















「珍しいな・・・あんな風に言うなんてさ。」

「っ・・・」

?」

「なんでかな・・・熊井さん、悪くないのに・・・。」

「大人ってよくわかんねぇな。」

「そうだね・・・なんで、人の困ることしちゃうのか・・・」



迷惑になるのはわかっていた。

でも、少しでも何かしたかった。






































次の日ももちろん私は手伝っていた。



























隼人は3:00から手伝いに来ていた。




























__________






































「どーもー。」













「タケちゃんたち、いらっしゃい。」

「げっ!!」

「お客様でしょ?」

「だってさ。」

「何にする?」













「全員チャーシューメンで。」


















「全員醤油ラーメンね。」

















「うん。(笑)熊井さーん、醤油ラーメン四つです。」





























そんなこんなで、時間は過ぎ、久美ちゃんが来た。




























「お、やってるなー♪」

「んだよ。みんな俺チェックかよ。」

「仕方ないじゃない。文句言わないの。」

、エプロン似合うな。いいな・・・。」

「お前のエプロン姿なんか見たくねぇっつの。」

「コラ。」

「ってか、みんなうぜぇ。」

「コラコラ。」

「へ?みんな?」



あとあと、皆になんで来たのー?って聞いたら隼人チェックだったらしい。




『ヤンクミじゃなーい?』


「お!!ってことはお前らもか?」

「だって面白くない?」

「そうそう。誰にでも愛想のいい隼人なんてめったに見られないしな。」

「俺で遊んでんじゃねぇよ。」

「完全にな(笑)」



あ、だからさっきから機嫌が悪かったのね。(納得)



「結構向いてんじゃねぇの?」

「竜もそう思う?私も昨日から思ってた。」

「ああん?」















ズルズル・・・・
















「いや、音立てすぎだから」



誤魔化し下手?



「あたし、チャーシュー面とギョーザねv」

「お前が言うなよ。」

「コラ、仕事しろ。」

「へーい。」



隼人って遊び甲斐があるよね。






















ん?

























なんか、悪寒がする・・・気のせいかな・・・?




























ガラガラッ!!






























「ハイ!いらっしゃい!!まずいラーメン屋にようこそ!!」














ガンッ!!


















またこの人たちか・・・・。

悪寒がしたわけだ。

それより・・・今は久美ちゃんがいるのに・・・。



「ちょ、ちょっと!なんなんですか!?あなた達は!!」



久美ちゃんがやめさせようとしてる。



「商売の邪魔すんなら他行ってください。」



「なんだとコルァ!!」

「ヤンクミ!いいよ!!」

「熊・・・」

「ずいぶんと威勢のいいお客さんだなあ。」

このままじゃ、全部ばれちゃう。

熊井さんが必死で隠してたのに・・・。

「店長さんのコレかい?」

コレって何?

小指立てたってわかんないし・・・。

「私はこのこの担っ!」

「ちげぇよ!この人はただのお客さんだ。」

「熊!?」

熊井さん・・・。

見ててすごく辛そうだよ。

「そうですか。まあ、今日はこの可愛いお客さんに免じて、今日のところは帰ります。いくぞ。」


『ヘイ。』


やっと居なくなると思ったら熊井さんの胸倉をつかんで「最終通告だぞ」って。

すごく腹が立つ。

いろんな意味で腹が立つ。




・・・?」

「なんでこうなっちゃうんだろうね・・・。」

「わかんねぇよ。」

「うん・・・。」








































___________







































そのあと、公園に来た。





























「あいつら、地上げ屋なんじゃないのか?」

「久美ちゃん!!」

、少し黙ってろ。」

「っ・・・・」



熊井さんの気持ちも守れないんだね。

見てるほうはすごく辛くて・・・。






「たちのけって脅されてるのか?」



それ以上はいらないで。


関わっちゃわないで。



「脅されたのは今日だけじゃないんだろ?」



久美ちゃんはとっくに気づいてる。


どうすることも出来ない。



「顔の傷、あいつらに殴られたのか?」



熊井さんは一言も話さない。



私も隼人も何も言わない。



「何ですぐ相談してくれなかったんだ?そんな大事なこと、何で言ってくれなかったんだ?水臭いじゃないか。」
水臭いとかじゃないんだよ。久美ちゃん。

?」



「竜・・・離して。久美ちゃんを止めなきゃ。」

「無理。あいつはとまんねぇよ。それより、泣きそうな顔してる。」

「今泣きたいのは私じゃないから。」

「でも・・・」

「少なくとも熊井さんや隼人が涙を流すまで絶対に泣かないから。」

「そっか・・・。」



私よりも泣きたいのはあの二人で、必死に涙こらえて・・・だから泣かない。

だから、久美ちゃん・・・もうやめて。





「でも、もう大丈夫だからな。あたしが力になるから。任せてくれ!な?」


それじゃあ、駄目なんだ。

今の熊井さんにそれは駄目なんだ。



「冗談じゃねぇよ。」

「熊?」

「余計なおせっかいなんだよ!ヤンクミには関係ねぇだろ!!」

「関係ないって?」

「お前はもう、俺の担任の先公じゃねぇだろ!?卒業したの、三年前だぞ?いつまでも先公面して口挟んでんじゃねぇよ!!」



もうやめて・・・。

どっちもお互いを思ってるのに・・・なんでこうなっちゃうの?



「誰にだって考えがあるんだよ。ヤンクミに助けてもらわなくてもちゃんとやっていけるよ!!」

「熊!?」

「余計なことしないでくれ!迷惑なんだよ!!」



本当に熊井さんが言いたいことはそれじゃないのに。



熊井さんは歩いて去っていこうとして、久美ちゃんはそれを止めようとして。

どうしてこんなにもすれ違っちゃうのかな・・・。




「熊井さん・・・。」



私が名前を呼んでも届くわけじゃなくて・・・熊井さんは行ってしまった。



「あいつ、どうしちゃったんだろ。本当にかわっちまったのか?まさか、店、手放すつもりじゃ・・・。」

「違う!!」

「そんなことするわけねぇだろ!!」



隼人・・・そうだよね。

私が言うよりきっと隼人が言った方がいい。



「何でわかってやんねぇんだよ。熊井さんにとってあの店がどんなに大切か、お前が一番良く知ってんじゃねぇのかよ。」

「矢吹?」

「なのに、お前がそんなこといったら熊井さん、かわいそうじゃねぇかよ。」



言葉はすごく幼稚だけど、でも、隼人らしい。


泣いてもいいのに、私は今にも泣きそうなのに、隼人は強い瞳で久美ちゃんを見てる。



「隼人。」

「竜・・・?」



竜はとっくに気づいてる。

私じゃ止められないんだ。



「お前、何か知ってんだろ。それに、も。」

「矢吹!!!」



私の口からはいわない。

絶対に。

熊井さんの気持ちをうまく言える自信がない。



「はぁ・・・昨日もあいつらが来て、熊井さんが立ち退きなんかしねぇっていったら・・・。」




























隼人は昨日のことを全て話した。




















熊井さんが蹴られ、殴られ続けたこと。

自分は何も出来なかったこと。

私のこと。

熊井さんの気持ち。



「俺も、も、巻き込みたくねぇからもう店にはくんなって言われたけど、何か納得いかなくて、今日も無理やり。」



絶対熊井さんは手放さないよ。

大事なものだからね。

「熊井さんが一人であの店と、家族、守ろうとしてるから。」

「そっか、熊、そんなこと・・・。そうだよな。熊はそういうやつなんだよ。」



うん。

そうなんだよね。久美ちゃんが一番よく知ってる熊井さんなんだよ。



「熊が、あの店、手放したりするはずなんてない。」

「あぁ。」



うん。

そうだよね。

そう、信じてるよ。





NEXT





あとがき。

ここはつまんないね。
やっぱ沿ってる部分よりオリジのが楽しくて仕方がない。
早くオリジにならないかな。


瀬陰暗鬼