今、隣にいる女から香る甘いローズの香りの香水。

また、かえた。

この香りは嫌いだ。大嫌い。



「何?」

「別に。」



この女の強い瞳でみられると何も言えなくなる。


どんどんひかれていく。





でもあなたは俺からどんどん離れていく。










冬のように・・・。











「智久、もう帰るわ。あいつが帰ってくるから。」

「うん。気を付けて。」

「ありがとう。」










誰かが言ってた、人間特別な人なんていないって。

でも、信じられない。

だって、あの女はどうあがいても、手に入らない。





「ぴぃ?」

「亀・・・。」

「何してんの?」

「会ってた。」

「そっか。話聞こうか?」

「うん。」


亀は俺があの女を好きなことを知っている。

あの女もきっと知っている。だから、あってくれる。





でもさ・・・。











「好きって言ったら一緒にいられなくなりそうで、怖いんだ。」





「関係が崩れちゃうってこと?」

「そんな感じ。」

「だからって、無理しすぎるとぴぃが壊れちゃうじゃん。」






亀の言うとおりで、実は爆発寸前。





「喧嘩するといつも電話してくんの。好きだから断れないし、でも結局アイツのとこに戻るんだよ?」

「見守るのも大変だね。」

「でしょ?」

「俺だったら着信拒否だな。」

「でも、伝えてあえなくなるよりは幾分かまし。」










「それは本人に聞いたの?」

「いや、だって無理。あの女さ、俺と一緒にいるときは必ず指輪つけてんの。ズルイよね。」

「ズルイね。」

「俺じゃなくて亀に愚痴を言えばいいのに。」

「俺は仁とぴぃで手一杯。」

「何それ。あいつ亀に愚痴言ってんの!?」

「うん。」

「俺のオアシスなのに!!汚れないでね。」

「あはは(笑)」





Piruru...





「うわ!寂しい着信音!!」

・・・。」

「でたら?」

「うん。」



Pi...





『智久っ・・・。』

「何?え、泣いてんの!?」

『会いたい。』

「わかった。今どこ?」

『外、うちの近くの駅の近く。』

「迎えに行くから動かないで。」

『うん。』





Pu...





「亀、ゴメン・・・お呼びだし。」

「いいよ。俺も仁からお呼びだし。」

「また喧嘩かな・・・。」

「頑張れ。」

「うん。俺、損してるよね。」

「俺も。」










―――――










「智久!」

「泣き声だったから心配した。」

「ありがとう。」


何でこの女は笑顔なんだろう。

俺を呼んだときの顔とかズルイよ。



誰にも描かれてない白いキャンパスみたいな癖に実際はアイツ一色に染まってる。





細い指に光る指輪が物語っている。





アイツは友達、親友だ。





でも、それを全部捨ててでもこの女がほしいんだ。










「あ、雪。」

「寒くない?」

「平気。」


心の中でずっと望んでる。





アイツとこの女が別れること。










この雪が積もって、そして溶けたら別れてるかな?





そうしたらこの気持ちを伝えられるのに。










「私、別れたほうがいいのかなとか考えたことあるのよね。」

「好きなんじやないの?」

「うん。好きよ。愛してる。」


俺の馬鹿。

なんで、





俺にしとけよ。





って言えないのかな。










「ねぇ、智久。雪が溶ける頃になったらもう一緒にいないよね。智久にも彼女が出来ちゃうだろうし。」











なら、雪を溶かして。





忘れさせてよ。










―好きだよ。










何度言おうとしただろう。





でもこの関係を崩したくないんだ。















大切だから。















「ねぇ、話があったんじゃないの?」

「あ、うん。私達ね、結婚するの。許しを貰えたのよ。でも、もちろん秘密だけどね。」



なんかふっきれた。






邪魔な指輪。










これがあるから言葉にできない。



なら・・・





「智久?」


「おめでとう。でも・・・」





を抑えてキスをした。










幸せなんかにしてあげない。





ズルイじゃん。





この二人ばっかり。










「ぴぃ!何してんだよ!!」





「何って、キス。」





「ふざけんなよ!てめぇ。」

「顔と体はやめて。明日仕事だから。」

「じゃあどこも殴れねぇじゃん。」

「だから殴るなっての。」






「仁には殴る資格はないじゃん。」






「亀・・・。」

「どういう意味だよ!亀!!」






「ぴぃの思いを知って利用したちゃん。知らずとも苦しめてた仁。
 今の今まで我慢してたぴぃ。ぴぃのどこが悪いの?そんなぴぃを仁は殴れるの?」





「っ・・・。」





「智久・・・。ごめんなさい。ごめん・・・。ごめんなさ・・・い・・・。仁、ごめん。
私がしてたことは浮気よ。結婚なんて出来ないわ。しちゃいけない。ごめんね・・・。
和也君も、ごめんなさい。今まで黙っててくれてありがとう。


   三人とも・・・さようなら。」











涙を流すこの女はズルイ。






でも・・・











「ぴぃ、行こう。ここで同情したら駄目でしょ?」





「亀・・・うん。」










幸せなんかにしてあげない。










そう思った。










でも・・・











せめて、

最後までチャント伝えられなかったこの思いが消えるまで、





まだ、あなたのことを思っていてもいいですか?











end...










あとがき

やー・・・悲恋。
これは・・・ぴぃ様夢です。(そうですとも。
えっと・・・ぴぃは主人公が好きで、でも主人公は仁と付き合ってます。(初期。
仁と主人公がけんかするたびに、主人公はぴぃの元で浮気。
仁は亀ちゃんに愚痴を。
そして、そのあと、ぴぃと亀ちゃんは毎回会っている。
って感じですかね。
で、最終的に主人公が泣き声だったのは仁にプロポーズをされたから嬉しくてです。
結局男の友情の勝ちですね。(何それ。
たまにはこういうのもいいとおもいます。
得をしたのは亀ちゃんです。
亀ちゃんは仁に愚痴を言われることがなくなった分彼女に・・・(なんじゃそれ。


瀬陰暗鬼