「武ィ!今日はみんな連れて帰って来いよ!」

「わぁってる。んじゃ、行ってくる!」

「おう!」





親父が朝から張り切っている理由。
それは今日は俺の誕生日だからだ。

きっと、学校に行ったらみんながおめでとうと言ってくれるに違いない。


でも、一番おめでとうって言って欲しい奴は学校にいないし、きっと、今日が誕生日だって知らないんだ。
自分から言おうとは思ってないので、聞けるかわからないな。





「あ、山本!」

「おー、ツナに獄寺。」

「今日、誕生日だよね。おめでとう。」

「え、今日は野球馬鹿の誕生日なんスか!?」

「え、うん。そうなんだよ。」




やっぱり、おめでとうが降ってきた。



部活に行っても、クラスでもその言葉は絶えなくて、すごく嬉しい気持ちになった。


そのおめでとうは、放課後まで続いた。





「あ、ツナ!獄寺!!」

「あ、山本!どうしたの?」

「今日、家に寄ってってくれねぇか?親父がさ、誕生日だからってはりきっちゃって。」

「いいの!?」

「チビ達や、笹川達も誘ってな。」

「うん!俺、家に連絡してくるよ!!」

「悪ィな。」





笹川達も・・・と言ったのは今回ばかりはツナのためじゃなくて、自分のためなんだ。
誕生日が今日であることを知らない彼女が、親友とともに来てくれる事を少し期待していたりする。
笹川があの子に連絡をしてくれたら・・・の話だけれど。

もし、彼女が来たらきっと怒っているだろう。
どうして教えてくれなかったのって怒って、それでもおめでとうって言ってくれるんじゃないかってそんな期待をしている。
これは単なる妄想でしか、ないけれど、実現するといいなんて思うと顔がにやけた。











*








夕方から夜にかけて、家にたくさん人が集まった。



でも、やっぱり彼女はいない。





親父が笹川のことを俺の彼女とか誤解したりして、寿司パーティーはぐちゃぐちゃだった。

それはそれで楽しかったけどな。





ガララ・・・





「こんばんはです!山本さん、お誕生日おめでとうございます!」





彼女の親友が登場した。


相変わらず元気な子だ。





「今日は山本さんにビッグなプレゼントを持ってきました!!じゃっじゃじゃーん!」





現れたのは彼女。



今日、一番会いたかった彼女本人だ。





「山本くん。」





にこっと笑った彼女に見とれてしまった。





でも、次の瞬間・・・






「私は・・・山本くんの彼女だよね!?」





怒っているのがわかった。





「うん。」

「なら、誕生日くらい教えてよ。そうじゃないと・・・」





おめでとうも言えないじゃないと小さく言った彼女は少し赤くなっていて俺はすごく嬉しかった。











*








「楽しかったなー。」

「・・・。」





まだ彼女は怒っていた。





「ごめん・・・」

「別に。」





やっぱり怒っている。

ここで、怒った顔も可愛いなんて言ったらきっともっと怒ってしまうだろう。





・・・」

「何?」

「キス・・・してもいい?」

「殴るよ。」





人が怒ってるときに、何言ってるの!と怒られた。

でも、やっぱり可愛いんだよな。





「なーなー。」

「私、怒ってるんですけど。」





ごめん。って言ったら許さない。と言われてしまった。





・・・」

「山本くん・・・」

「ん?」

「えい!」

「ふぐっ・・・」





口に押し込まれたものは、甘くて優しい味がした。





「ふぐふご・・・」

「・・・誕生日って聞いて急いで作ったんだよ。パウンドケーキだけど・・・」

「ん、まい。」





ありがとな!と言ったらうん。と小さく笑ってくれた。



だから・・・





「キスしていい?」

「もう!そればっかり・・・」





今度のは拒否じゃないから、ゆっくり近付いて口付けた。





「・・・山本くん。おめでとう。」





やっと聞けたその言葉はやっぱり嬉しくて。





・・・これからもよろしくな!」

「うん。仕方ないな。」










春爛漫。











君に言わなかったのはちょっと照れくさかったから。


あとがき。

ほのぼのを目指しました。
山本初書きですよ。
頑張った俺。やったね、俺。
いつもながら作成は授業時間。
仕方ないよね、家だと時間がないんだ。
うん。僕はがんばってるよ。
ってことで、最初で最後の山本にならんことを祈っておりますわ。

瀬陰暗鬼。