今日も彼は部活に大忙し。
万年帰宅部の私には関係なし!




「あ、。」
「はいです。…どうしたの?」
「忘れ物しちゃった!」



へらへら笑いながら教室入ってきたのはクラスメイト兼幼馴染の麗。
(なんだよ「忘れ物しちゃった!」って。可愛いですね!)
あたしはとりあえず中断していた小説に目を戻した。
無言はなんだか空気が重くなるような気がしたので会話は続けた。
その間もロッカーを漁り続ける麗。そのたびに少し痛み気味の髪がふわふわと揺れる。


「今日はどっちなの?」
「けーおん。」
「ふうん。つーか、サッカーと軽音の掛け持ちキツくない?」
「別にそんなことないよ?俺、サッカーもギター…というかバンドも好きだから。」
「そっかあ…。」




会話が途切れた時。あった、と嬉しそうな声が耳に届いた。
ちらりと麗を見ると、スコアと思われる紙の束とよくわからない小さな四角い箱を持っていた。




「忘れ物、あった?」
「おー。」
「よかったねえ。がんばれよ!軽音部。」



ひらひら手を振りながら少々気だるげにエールを送る。





「そうだ、。」
「何?」





「今日、6時に終わるから。」





教室に迎えに行くから待っててね。






風のように現れて嵐のように去っていった彼。
この時の彼の笑顔を私は夕焼けの眩しさで気付かなかった。




レ ト ロ ポ ッ プ
(やだ、6時まであと1時間しか無いじゃない!)

fin.(2008.04.28、加筆修正09.13)
→青春ですね!