今日は久しぶりのオフの日。
愛しい彼女と会う約束をしっかり入れておいた。
Holiday Life
最近忙しくて電話かメールくらいしかしていなかったから彼女に会うのは久しぶりだ。
彼女に会ったら真っ先に抱きしめてやろう。
早く彼女は来ないだろうか、なんて考えながら彼女が来るのを待っていた。
(「私、麗の家行くねー。」って昨日電話越しに言っていたし)
〜♪〜♪
携帯がメール受信の音を奏でた。
開いて慣れた手つきで操作をして受信したメールを開く。
送り主は。珍しく無題だった。
『ごめん、会いにいけないかも…。』
たった一言。俺はすぐに何かを感じた。(電話じゃなくてメールだったのもある。)
『何かあったの?』
とりあえずそれだけ書いて送信。一体何があったのだろうか。
バイト?気になって仕方が無い。
また携帯がメールを受信した。すぐに見ればまた一言書いてあった。
『具合悪い…。』
もう俺は返信せず、携帯と財布と鍵を持って玄関を出た。
行き先は、の家。
+ + + +
車をのいるアパートの駐車場に止めた。
早足での部屋へ向かう。一体何があったんだろう。
インターホンを押して、ドアが開くのを待つ。
ゆっくりドアが開いて、ドアの影からの顔が見えた。
「…はい?」
「。どうした?」
「麗…。」
「入るよ?」
玄関に入って、改めてを見る。
まだパジャマ姿に少し顔色が悪い。一目でわかるからかなりのものだと思う。
「どうしたの?」
「…頭が痛くて…。」
「薬は?医者から貰ったのあるだろ?」
「飲んだ…だけど効かないの。」
辛そうな表情に俺まで頭痛がうつりそう。
そういえば、はいつも医者からもらう薬のほかに市販の薬も持っていた気がする。
「もう1種類あったじゃん。」
「飲もうと思ったらなくなってた…。」
「…俺買ってくる。」
俺はそれくらいしかできない気がするから。
「うん、お願い…あたしもうちょっと寝てる…。」
「バファリン?」
「バファリン効かない…。イブ買ってきて。」
「イブね。わかった。」
一人で歩くのが辛そうなをベッドまで運んで、外に出た。
ガチャンと鍵を閉める。(にはインターホンが鳴っても居留守をするように言った。)
さっきエンジンを切ったばかりの車に乗り込んで、またエンジンをかけた。
近くのドラッグストアまでは10分くらいだ。
急いでも往復20分ほどはかかってしまうだろう。
+ + + +
ドラックストアに入って、すぐにお目当ての薬を手に取る。(思ったより早く見つかった。)ちなみに36錠入り。
レジへ行く途中に赤い箱のビスケットが目に入った。考える暇も無くすぐに薬とともにレジに置く。
「合計、1,140円になります。」
生憎、財布の中の小銭が少なかった。1,200円をレジのトレーに置く。
その間に薬とビスケットは袋に入っていた。
+ + + +
鍵を開けて部屋に入る。
は寝ているようで部屋は静かだった。
そっとベッドに近づけば小さな寝息を立てたが布団の下で丸まっていた。
髪を手櫛で梳いてみたけど、寝息は乱れることもなく規則正しいままだ。
そのまま起きるまでそっとしておこうと思って部屋から離れようとすれば小さく唸る声。
振り返るととろんとした目でがこっちを見ている。
「ん…麗…?」
「薬買ってきたよ。飲む?」
「飲む…。」
「水持ってくるね。」
開ける途中だったドアを今度は開けて、水を取りに向かう。
ガラスのコップに水を汲んだ。(ぬるま湯では無いはず。)
「はい、水。」
「…薬…。」
「はいはい。」
いつも以上に甘えているを愛しく思いながら、薬の箱を開封して薬を取りだす。
「飲ませてあげようか?」
「だ、大丈夫。一人で飲める…。」
…やっぱりいつものだった。
+ + + +
の横で雑誌と珈琲をお供に時間を潰す。ビスケットはまだ未開封。
いつもよりゆっくりと時間が流れていくような気がしたけど時計の針はさっき見たよりも2つも時を過ぎていた。
「お昼、俺が作ろうか?」
「…オムライス。」
「材料あるの?」
「昨日、今日のために買ったから…ある。」
「わかった。はおとなしく寝てるんだよ。」
髪を撫でてあげたら「はーい。」と返事が聞こえた。
やっぱり俺はに盲目だな、と溜め息(幸せな溜め息だよ!)を付きながらキッチンへ向かった。
こう見えてもオムライスは戒くんのお墨付きもらったんだ。
もおいしいって言ってくれるはず。
失礼と分かっているけど冷蔵庫を開けて材料を拝借。
オムライス二人分なら15分前後で出来る。
静寂に包まれた空間に包丁が材料をリズム良く切る音だけがにキッチンとリビング響く。
手際よく調理(しているつもり)を続ける。
+ + + +
予想通り、15分程でオムライス二人分が美味しそうな香りと共に出来上がった。後はのところへ運ぶのみ。
食器棚当たりをちょっと探し丁度いい大きさのお皿二枚とさらにそれをのせるお盆を取り出す。
もちろん、ケチャップも冷蔵庫から出した。
スプーンも引き出しから取り出した。
お盆をひっくり返さないようにしっかり持っての元へ行く。
「〜。オムライス、出来たよ。」
「食べるー…。」
よいしょ、と小さな声と共に横になっていた身体を起こした。
お盆を床に置いて、の分のオムライスを渡す。
「麗シェフが作りました、オムライスでございます。」
「オムライスくらいでシェフって…。」
「いいじゃん、言ってみたかっただけだから。さ、たーんとお食べ。」
「いただきまーす。」
スプーンですくって口に運んだ。
その横で俺はを見つめる。
ゆっくりと食べている。
「…どうかな?」
タイミングを見計らって聞いてみる。
「おいしい。すっごく。」
「でしょ?俺の得意料理だもんっ。」
「知らなかったー。私のより美味しいかも。」
「のオムライスのほうが美味しい。」
「…ありがと。」
それから俺もオムライスを口に運ぶ。
今日ぐらいは行儀が悪くたってしょうがない。
ベッドに寄りかかりながらと談笑。
「頭痛いの楽になってきた?」
「うん、薬大分効いたし、麗のおいしいオムライス食べてるし。」
「良かった。あ、ビスケットもあるんだよ。」
「それは3時のおやつに紅茶と一緒に食べたい。」
たまにはこんな風にゆったりとした1日を過ごすのも悪くないな、と思った休日の午後。
俺はといればそれだけで幸せになれるし。
「、大好きだよ。」
「ありがとう。私も大好き。」
fin.(2007.05.21、05.23修正)
→好きな人と過ごせれば幸せだね。
ちなみに頭痛に悩んでた頃に思いついたネタ。