秋晴れが眩しい昼下がり。
俺は気だるく机に突っ伏していた。





授業開始の予鈴が鳴り響くと周りで騒いでいた奴らは慌ただしく自分の席へ戻る。
そんな様子を横目で見つつ、俺は夢の世界へ旅立つ準備を始めたが…旅立つ5秒前に教室の扉は煩く開いた。


「てめーら全員いるかー?」


現国、か……。
現国担当は、銀八(と書いて、糞担任と読む)だ。奴は真面目な授業などするはずが無い。
何時も通りの死んだ魚のような目。
手に持っているのは教科書でも問題集でもなく、ジャンプ。(教師失格だろコイツ)



「…あれ、いないよね?どうしたんだー?」
「知りませーん。」
「あそ。それじゃあ欠席、っと。」



しばらくしたらすぐに騒がしくなる。畜生、眠れねェ…!
ガタンと音を立てて席から立ち、教室後方の扉へ手をかけた。


「高杉、何処へ行くつもりだ。」
「はっ…てめーには教えねェよ。」



廊下へ出れば、ほんの少し静かになった。
欠伸をかみ殺して向かうは保健室。(今日は屋上の気分じゃねェ…)





+ + + +





保健室前には『養護教諭不在』と書かれた紙が一枚貼ってあるのみで鍵は開いている。
俺は特に気にすることなく保健室へと足を踏み入れた。(独特の匂いが鼻を掠めていく)


とりあえず一番奥のベッドを仕切る白いカーテンを、開けた。


そこにはシワひとつ無いシーツと枕ではなく先客が眠っていた。
よく見るとそれは同じクラスの

静かな保健室と静かなの寝息。


俺は、只、カーテンを掴んだままを見ていた。



(ふと我に返り、時計へ目を運ぶと針はほんの少し進んだだけで)
(だが、俺にはひどく長い時間に思えた)




そっとカーテンから手を離し、眠り続けるのもとへ近づいた。
の顔の横に手を置き、ゆっくりと体重をかけるとスプリングの軋む音。

そしてゆっくりと、眠り姫に唇を落とした。





に、づけ
(唇を話した瞬間、彼女は目覚めるのだろうか…)

fin.(2009.02.16/up2009.02.27)
→要は一目ぼれ。…それにしては行動が早い。