クリスマス、聖なる夜に何を願う・・・
カプリッチオ
「うーん・・・」
「何やってんだ?」
「たっ・・・高瀬くんにクリスマス、何をプレゼントしようかなって・・・何がいいと思う?」
「しらん。」
「あ、青木くん・・・冷たい・・・」
クリスマス三日前。
未だに決まらないプレゼントに頭を悩ませる私。
人生初の彼氏とのクリスマスに毎晩眠れないくらいドキドキしてる。
「あぁ・・・どうしよ・・・。」
「・・・はあ・・・本人に聞けば?」
「なっ!?き、聞けないよぅ・・・だって、いかにもクリスマスだから贈り物します!って感じでしょ!?」
「クリスマスなんだからそうだろ。」
「うっ・・・で、でもっ・・・遠回しに私にもプレゼントください!って感じ・・・。」
「・・・欲しくねーの?」
「欲しいけどっ!」
いや、そりゃあね!貰えたら嬉しいけどっ!!でもっ、でもっ・・・
私は貰えなくても一緒にいれればいいなあって思うし・・・
プレゼントを贈りたいっていうのは私の願望だし・・・
それに・・・
「迷惑だよ。高瀬くん、部活もあるし・・・」
「ほー。主将の俺を付き合わせてんのに?」
「はっ!青木くん、部活、部活!!!」
「準太が迎えに来る約束だから。」
「・・・私、逃亡します。」
「逃げんな。」
だっ、だって・・・高瀬く・・・
「ちょっと、タケ?あんまりのこと虐めちゃ駄目よー。」
「何、虐め?」
「あ、準太。」
「(ひいっ!)高瀬く・・・」
私の髪の毛、先ほど逃げようとしたときに青木くんに引っ張られたからぐしゃぐしゃなのに・・・!
「、転んだとか?髪、ぐしゃぐしゃ。」
わ、笑顔っ。
う、嬉しいっ・・・って、私が笑われてるんだっ!
「青木くんが引っ張ったんだよっ!私、ど、ドジだけど転んでないよっ。」
「まじ!?タケ!のこと虐めんな!!」
「、反応面白ぇよな。」
「だーっ!何で同じクラスじゃねーんだ!!!」
私も同じクラスがよかったなあ。(去年同じクラスだったけど、接点なかったんだよ。)
青木くんと高瀬くん、交換してくれないかな・・・。
私は文系で、高瀬くんは理系だって言ってたから来年は絶対同じクラスになれないし・・・。
「、。」
「は、いっ!?」
「なんだそりゃ。」
「うっ・・・」
「ははっ。あのさ、今日、一緒に帰ろ。音楽室まで迎えに行く。」
「え、私がグラウンドに行くよ!グラウンドから音楽室遠いもん。」
「いや、いい。長く、一緒にいたいから・・・。」
「・・・うんっ。」
嬉しい。
部活の後だから疲れてるはずなのに、こんな風に言ってもらえると凄く嬉しい。
「準太、行くぞ?」
「普通、迎えに来た奴をおいて行こうとしねーだろ!」
「に会いたくて迎えに来る奴への優しさはない。」
「うっわ、バラすなよ!!」
「大丈夫、には聞こえてない。」
「あ、本当だ。(可愛いな。)」
私は高瀬くんの後姿を見送って音楽室に向かった。
*
私しかいない教室で鍵盤を叩く。
不規則なメロディーが鳴る。
あ!いいこと考えた。
クリスマスだもん・・・あり・・・だよね?
そうと決まれば今日家に帰ったら早速知り合いに連絡をとろう。
クリスマスの日は部活のミーティング兼、クリスマスパーティーをやるって青木くんが言ってた。
だから、イブにしよう。(その日は空いてるから一緒に遊ぼうって高瀬くんも言ってくれたし)
日付は24日。
念のために高瀬くんに帰りに確認しよう。
「どんなのがいいのかな・・・。」
音楽室の楽譜をあさるが、どれもぴんとこない。
きっと、家にある楽譜をあさっても、知り合いの楽器屋さんに行っても同じだろう。
でも・・・私、作曲センスないって言われたんだった。(私のピアノの先生ははっきりものを言う人なんだよ。)
しかも、私が好んで弾く曲、弾き易い曲には、少し悲しい感じの曲が多く、クリスマスには不釣合いだ。
「、お待たせ。」
「あ、高瀬くんっ・・・」
いろいろ考えていたら時間の経過は早かったみたい。
「それ、弾いてた?」
「あ、うん。少しだけ。」
「寒いのに窓開けて?」
「うそっ!?わ、開いてる・・・集中してて気付かなかったよ。」
「ははっ。でも、そのおかげでグラウンドまで聞こえてた。」
「えっ!?わ、恥ずかしっ・・・」
「いや、すっげー綺麗だった。」
聴いて欲しい。
この人に、私のピアノを聴いて欲しい。
この人のために弾きたい。
この人のためだけに私は弾きたい。
「ねぇ、準太くん・・・」
「ん?」
「あのねっ、24日なんだけど・・・」
高瀬くんの返答はイエス。
―私の・・・聴いてくれますか?
*
24日18時。
「高瀬くんっ!!」
待ち合わせの場所は私の知り合いが経営しているレストラン。
「あ、ここで合ってる?」
「うん。」
「それ、ドレス?(可愛い。)」
「あ、うん。パーティードレス。でも、このままでも十分外、歩けるよ。」
「コートかなんかを着ないと風邪ひくぞ?」
「あ、急いで来たからっ・・・中に忘れて来ちゃった・・・。と、とりあえず、中に入ろ?」
「ん。」
レストランの地下はバーになっていて、22時に開店だからこの時間は誰もいない。
そして、ここにはグランドピアノが置いてある。(雰囲気作りで。)
「ここ、知り合いのお店なの。どうしてもこれを借りたくて。」
カタン・・・とグランドピアノの椅子に座る。
「ピアノ・・・?」
「うん。レストランのBGMにもなるからいいよって貸してもらったの。」
少し手が震えている気がする。
でも・・・
深く深く深呼吸をした。
白い鍵盤に指を置く。
そして・・・
あとのことはよく覚えていない。
ただ、ひたすらに鍵盤の上を指が滑る。
誰も知らないし、二度と鳴ることのないメロディーが響く。
私とあなただけの・・・
*
「い、以上ですっ・・・」
「今の・・・」
「あ、お、オリジナルなの・・・高瀬くんのことを思ってただひたすらに弾いただけなの・・・。」
急に恥ずかしくなった。
「私・・・こ、こういうのはじめてで・・・」
「すっげー、嬉しい。」
高瀬くん・・・
「俺、のピアノ、好き。」
「あ、ありがとうっ・・・」
嬉しい・・・すごく、すごく。
「これ、クリスマスプレゼント?」
「あ、うんっ。結構考えたんだけど、何にも思いつかなくてね・・・だから・・・」
「さんきゅ、すっげー、嬉しい。」
笑顔・・・。
喜んで貰えた・・・?
「これ、俺からのクリスマスプレゼント。」
渡されたのは小さな箱で、中にはキラキラとしたチェーンに繋がれた指輪。
「こ、これっ・・・」
「ピアノ弾くのに邪魔になるかなあって思ったんだけどさ、これしか思いつかなかった!邪魔になったらやだから一応チェーンも・・・安物だけど。」
「あ、りがとっ・・・うれしいっ・・・」
ぎゅうっと小さな箱を抱きしめた。
「こーゆーの恥ずかしいな。」
「う、うんっ。」
でも、すごくすごく幸せです。
「あと、一つさ、お願いしてもいい?」
「お、お願い?」
「準太って名前で呼んでくれない?高瀬ってさ、よそよそしいし。」
「・・・うん。」
すー、はーって一回深呼吸して・・・
ごくりと一回唾を飲んで・・・
「・・・準太くんっ・・・?」
すごい嬉しそうに笑って、もう一回って言われた。
もう一度言うとまた、もう一回。
そしてもう一度・・・
3,4回同じやりとりをした後、笑いあって、見詰め合って・・・キスをした。
そしてもう一度奏でよう。
聖なる夜に響くカプリッチオ。
―Merry Christmas 2007.
あとがき。
メリークリスマス!
J&ドラマ代表の上田夢より気合入ってる漫画代表準太夢。
何故かって?
愛の大きさなんて落ちじゃないですよ。
ただ、可愛いラブラブ準太夢が書きたかっただけです。
でも、気合入ってる分、気に入ってます。
すごく、自分では上手くまとまったなあって思ってます。
実は最初、無心で書き始めたら一個失敗しまして・・・。
今度は無計画で二作目を書きなぐり・・・途中でピアノネタを思いつきまして・・・。
カプリッチオは奇想曲・狂想曲っていう意味です。
本当はセレナーデにしようかなあと思ったんですが、セレナーデは男の人から女の人への曲なのでやめました。
可愛い準太くんをお楽しんでいただけたでしょうか?
個人的には最初のタケが好きです。(ぇ
MerryChristmas!
瀬陰暗鬼。