二月一日。今日は冬晴れの良い天気です。
だけど外は相変わらず寒いし、昨日降っていた雪でうっすらと雪景色が見える。
そんな日に外には出たくないのであたしはエアコンの温かい風が一番当たる所に座ってぼーっと雑誌を眺めていた。





はず。





「ねーーねーねー。」
「あーはいはいはい。」
「なー。」




後ろからエアコンの温風と違う温かさを感じる。声もする。
今は?(家に一人。)
親は?(二人とも仕事。)




















…おかしい。
家の鍵は閉めたはず。でも後ろに人がいる。
誰かは検討つくのだけど。
でも一応確認の為、問いかけの意味を込めて声を発した。





「…なんで?」
「…なにが?」
「家の鍵…。」
「合鍵。」
「今日、は?」
「一日、オフ。」




あたしは雑誌を閉じてそのまま振り返った。
思ったとおりの人が後ろにいた。(あたしの背中にくっついていたようだ)




「…オフ?」
「うん。は?」
「3年生は今日から卒業式まで学校お休み。」
「じゃあもオフだ?」


なんか違うような気もする。


「まあ、そういうことになります。」
「よし、それじゃあ今日一日俺に付き合って。」
「え。」


パジャマを着たままのあたしの腕を引っ張りルキは立ち上がった。
あたしは抵抗する事も無くワンテンポ遅れて立った。















ルキの私服は好き。センスが良いから。
『ガゼット』の時のルキも好きだけど、あたしは私服のルキが好き。(やだ、何言ってるんだ)





「ちょっと待って。このままじゃ出かけられない。」





あたしは今日一日ゴロゴロする予定だったからパジャマだ。寝癖だって直してない。
普通の子なら『こんな姿彼氏に見せられない!』なんだけど、あたしの場合思う暇無く押しかけられた。
とりあえず今は着替える事が第一優先事項。
キッチンでコーヒーを淹れて(もちろんインスタント)ルキに持っていく。

「適当にテレビとか新聞とか雑誌とか読んで待ってて。あとこれあげる。」

コーヒーにリモコン、新聞を渡してあたしは部屋に行った。









…今日は…2月……あ。



今日、朝からルキが押しかけてきた理由がやっと分かった。
なんでこんなに大切な事を忘れていたのだろう。

だからそのお詫び…というのも変だけど、少しだけいつもより御洒落をしてみたの。
気付いてくれるかな…。





+ + + +





「終わった?」
「あと寝癖直すだけ。」

どうやらコーヒーを飲み終えて暇になったらしい。
テレビから流れる賑やかな音が聞こえてくる。
急いで寝癖をアイロンで押さえつけて、暇そうにソファに沈んでたルキの所へ行った。


「待たせてごめんなさい。」
「…よし、行くか。」


ソファから降りたルキに再び手を引かれ、玄関に向かう。
鍵を忘れないようにかけなければ。




ルキは車を持っていないので徒歩で駅まで。
会えなかった間の出来事を互いに話す。
その時間も大切にしたい。
ルキの職業上、こんなにゆっくり出来る時間は限られているから。


「ルキ、新曲ありがとう。すごい良かった。」


恥ずかしそうな仕草をするルキがとてもかわいい。
でも嬉しかったのか、微笑んでいた。
それを隠すかのように繋いでいた手をほんの少し強く握ってくれた。
(この癖を知っているのは…あたしだけ?)






「今日はさ「ルキ?」

「?」











「ありがとう、生まれてきてくれて。…お誕生日おめでとう。」










今日は、貴方の誕生日。
あたしには高いプレゼントなんて出来ないけれど。





「ありがと。」
「これ。普段用にどうかな、って。」





道端にも関わらずあたしが渡した小さな箱を包装紙から取り出す。
シンプルだけど、黒の石が輝くクロスのネックレス。





「すげー、カッコイイじゃん。」
「気に入ってくれた?」
「最高。ROCKだな。」
「そのネックレスがどんな物よりも素敵だったの。」



ルキは早速着けてくれて、どう?と訊いてきた。
あたしは小さく頷いた。


「今日からオフの日はこれ着ける事にした。」


嬉しい言葉を呉れた後、手を繋ぎな直してまた歩き始めた。
今日は一日ルキの我侭に付き合おう。



そして、ケーキを買って小さな小さなお誕生会を開こう。





背伸びをしたあたしから、いつも素敵な貴方へ。

(愛しています。早く貴方に似合うような女の子になりたい。)

fin.(2008.02.01)
→ルキ氏お誕生日おめでとう。貴方の全てが大好きです。