「ここが、廉の学校・・・西浦高等学校かあ・・・」
校門の前に一人、女の子がいた。
この子は誰よりも
大好きな子です。
「三橋ー。」
「た、じまくんっ!?」
「今日誕生日だろー?三橋ん家でお祝いしよーぜー。」
「う、うんっ!!」
「いや、何で、三橋ん家で三橋の祝いするんだよ・・・」
「いーじゃんかー。」
男の子達の楽しそうな声が聞こえる。
その中に、廉の苗字もあった。
微笑ましいなーって、思いながら、その集団を見つめてた。
「あのー・・・」
「あ、はい?」
いきなり声をかけられて、営業スマイルになってしまった。
「(可愛い・・・!)あの、野球部に何か御用ですか?」
「あ、はい。でも・・・出来れば、向こうが気付くまで黙っててもらえませんか?」
営業スマイルで可愛い女の子に告げる。
修が、西浦にはマネジがいるって言ってたから、多分この子がマネジだろう。
「は、はい!」
「ありがとう。私、三星学園のって言います。部活はソフト部!」
「え・・・三星って・・・もしかして、三橋くんに・・・?」
「うん。今日、廉の誕生日だからね。」
そういうわけだから、黙っててねとしーっと口に手を当てながら言ったら、女の子は顔をちょっと赤くして、去っていった。
「さて、いつになったらにっぶーい幼馴染は私に気付くかな。」
ちょっとわくわくしながら、グラウンドに目を向けた。
*
かーかーかーとカラスが鳴く。
時計を見ると既に六時は過ぎている。
流石にここまで気付かれないと人は落ち込みたくなる。
自分に魅力がないのではないかと悩みたくもなる。
「帰ろっかなー・・・」
廉にとって私は気付かないくらいの存在なのかな・・・とかネガティブな方向に思考が走る。
「あれ?」
「へっ!?」
背後にいつの間にか人がいた。
「あんた・・・」
背後にいた人はキャッチャーの人だった。
こいつとは一度、昨年の夏大会の直後に顔をあわせてしまった記憶がある。
「三橋!!!!」
そいつは人の気も知らないで廉の苗字を叫んだ。
その声に振り向いて、廉がこっちにわんこのように走ってきた。
「な、にっ!?阿部くん!!」
私はとっさにキャッチャーの人の後ろに隠れた。
久しぶりに近くで見た廉はなんも変わらない少年だ。
「あぁ・・・こいつ、三橋の知り合いだった気がして。」
ひょいと私の前から阿部ってキャッチャーはどいてしまった。
「、ちゃ、んっ!?」
廉の目が大きく開いた。
「あ、久しぶりだね、廉。会いに来ちゃった。」
精一杯の笑顔で答えた。
「ちゃんっ!!」
「わっ!」
ぎゅうっていきなり抱きつく廉はやっぱ変わってないなって安心した。
「今日は、廉の誕生日でしょう?修もルリも会いたがってたけど、私が代表で会いに来たんだよ。誕生日おめでとう。」
さらにぎゅっと抱きしめられた。
私はぽふぽふと廉の頭を撫でた。
「ちゃんっ・・・会いに来てくれてありがとうっ・・・」
「もう、泣かないの。」
泣き声でお礼を言う廉をやっぱ可愛いなと思っちゃうあたり、私も年なのかなと思う。
「三橋の彼女?」
廉のチームメイトであろう人の声に気付き、廉は私から離れた。
「ちがうよっ!」
私は廉のこと大好きだけど、誰よりも大好きだけど・・・
「ちゃんは、俺のっ、一番大好きな友達だ、よっ!」
今は、廉の一番であればそれでいい。友達でもね。
「そう。私達は友達だもんねー。」
「うんっ!」
私達は私達のペースで進めばいい。
大好きなことにかわりはないのだから。
fin
あとがき。
レンレン書きにくいよ・・・。うん。
以上です。
瀬陰暗鬼。