アポロ様曰く明日の任務はロケット団の未来を左右すると言っても過言ではないらしい。
そんな任務に抜擢された下っ端のわたしは、アポロ様の為にがんばろう!と一人気合いをいれる。
其処までは良かったのに…一緒にこの任務を遂行する人の名前を聞いて、一瞬時が止まったような衝撃を感じた。
「…アポロ様、今、なんて言いました?」
「ですから、お前にはランスと一緒に任務に就いてもらいます」
「ラ、ランス様とですか…」
「何か問題でも?」
「いえ、この任務精一杯務めさせていただきます!」
「…期待していますよ」
大きく返事をしてアポロ様の部屋を出たわたしはガッツポーズをして喜びを表現してみた。
嗚呼あのアポロ様に期待されているなんて!正直信じられない!
ロケット団の下っ端のわたしが1対1でアポロ様とお話をすることでさえ奇跡に近いというのに。
期待している、そう言われただけでやる気が満ちてくる。
だけど、わたしと一緒に任務に就くのがまさかのランスだったなんて…。
(他人の前では一応ランス「様」と言っているけれどあんな奴呼び捨てで構わないと思う)
周りの同期の女子は皆ランスに夢中だ。
あの人の何処に惹かれるのかがわたしには到底理解できない。
正直ランスより、アポロ様の方がずっとずーっと素敵!
だって自称『ロケット団で一番冷酷な男』…って所が非常にダサいじゃないか。自称ってところが特に。
ランスに対する愚痴と明日の任務への緊張に頭と胸の中をもやもやさせながら自室へ入る。
あまりふかふかでは無いベッドに飛び込むと、腰に付けていたモンスターボールが小さな音を立てて落ちてしまった。
ベッドの上から床へ手をギリギリ伸ばしてボールを拾う。
良かった、傷は付いていないようだ。
「出ておいでー、グラエナ」
ボールの開く音と共に相棒のグラエナが飛びついてきた。
わたしのお気に入り。とても強くて、とても大切な相棒。
「明日はがんばろうね!」
「せいぜい足を引っ張らないようにしてくださいよ」
ドアの方から聞き慣れた声がした。(あまり聞きたくない声だったりもするけれど)
グルル…とグラエナが小さく唸る。
「こらグラエナ、駄目」
「威勢の良いグラエナですね。貴女よりは使えそうです」
「…ランス、様…」
「おや、が私の名前を呼ぶとは珍しい」
「勝手に部屋に入らないでください」
「ノックはしましたよ」
はいはいそうですか。適当に返事をしてグラエナをボールに戻す。
「相変わらず反抗的な態度ですね」
「そうですか」
「本当に貴女には腹が立ちます」
「わたしも常日頃からランス様には腹が立ちっぱなしです。イライラします」
そもそもどうしてこいつは自分の部屋のように振舞うのか。
一応ここは下っ端のわたしの部屋である。
用件はなんですかランス様、と早く出て行けオーラを出しつつ尋ねると、数枚の紙をぶっきらぼうに渡された。
「これを渡せと言われただけです。こんな用事がない限り貴女の部屋になんて来ませんよ」
「むしろ用事があっても来て欲しくないですけどね。他の方に来てもらいたかったです」
「生意気ですね」
「誉め言葉として受け取っておきます」
(やっぱりこの人は苦手だ。大嫌いだ。)
さあ、用事は済んだのだからお帰りください。大嫌いなランス様。
ほんの少しドアを乱暴に開けてやった。
fin.(2010.12.20)
たまにはこういう話でも。
title by 【 206骨 】