けぇきというものが食べたいと言われた。
安土桃山×バースデー×ケーキ?
「ねー、ちゃん!ケーキ作って?お願いー!!」
「けぇきって何です?」
初めて聞いたものに戸惑った。
「薫、この時代にはケーキも誕生日を祝う習慣もない。」
「あら?紅麗殿も御存知でしたの?」
一人だけ知らないのは寂しい。
「すまないが出かける。薫を頼む。」
「お気をつけて。」
私と彼らが出会ってから数日が過ぎ、暗かった私の家に明るさがあった。
幸せとはこういう日々なのかと嬉しく思っている。
「ちゃんの誕生日っていつ?」
「わかりません。誕生日を祝うなどしませんし、年を重ねる事を良いことだと思いませんから。」
「何で!?大人になるんだよ!?」
「大人になどなりたくない。」
大人になったら何があるのだろう。
「大人になったら結婚出来るよ!」
「より貧しくなるだけだわ。私を捨てたお母様のように。」
「ならないよ!」
薫はここを知らないからそんな風に言えるのだ。
「もし、好きでもない人と一緒になって富を得ることが出来ても、幸せにはなれない。」
悲しい話だ。
「ねぇ、ちゃん。」
「何です?」
「俺も駄目?」
「・・・え?」
「俺と結婚も嫌?」
「・・・薫・・・」
涙が溢れるかと思った。
「・・・嫌じゃない・・・嫌じゃ、ないよ。」
笑った。
「じゃあ、約束!」
「・・・うん。」
薫は私の太陽だと思った。
「薫、薫の誕生日は何時ですか?」
「へ?」
「祝いましょう。誕生日は越えてきた日を慈しむ日でもあるのですから。違いますか?」
「違わない!」
「そして、私を、早く娶ってくださいね。」
「・・・うん!」
幸せでいれる。そんな気がするのだ。
「祝う準備をしなくてはなりませんね。」
「ケーキ作ってくれるの!?」
「けぇきとは?」
「えっとねー」
薫はくりぃむとか初めて聞く事を教えてくれた。
でも・・・
「けぇきは作れません。」
でもね・・・
「卵を使ったふわふわのおかしは作りますよ。」
笑顔で言ったら、笑顔で帰ってきた。
「ちゃんの誕生日も祝おうね!」
「はい。」
私は自分の誕生日を知らないけれど。
でも、それは黙っておこう。
今、幸せだから。
あとがき。
ちょっと大人めな主人公ちゃんです。
年は15か14くらいで幼い設定なんですけど。
ちなみに紅麗さんは逢引中です。←
瀬陰暗鬼。