何処にも行かないでね?
あたしも一緒に連れて行ってよ。



いったいどういう運命であたし達出逢ったのかしら?
そもそも彼とあたしは国籍も身分も年齢も違う。
あたしは平凡な日本の高校生で、彼は…イタリアのマフィアのボス。
月と太陽くらいの違い。

そんな彼につり合う『女』になるためにあたしは常に一生懸命なの、気付いていますか?
たとえば、彼を困らせないために泣かない…とか。
一緒にいる時に、彼の視線があたしではなく知らない学校の制服を着た女の子だと気づいても、知らないふりをするとか。
(だけど自然と彼にキツイ視線を送ってしまう)
(生憎あたしは美人だとか、可愛いなんて部類の人間じゃない…)





+ + + +





そろそろイタリアへ戻んねーとなあ…。と空を仰ぎながらある日呟いたディーノ。
ここで我侭を言えたらどれだけ楽になれるのだろう。
繋いだ手を少し強く握る事ぐらいすればいいのに。あたしはどうして出来ないの?
いつも強がってばかりの自身に嫌気が差してきた。


「ディーノ。…仕事、溜めていたでしょ?ダメだよちゃんと仕事はやらないと。」
「ばれてたか。」
「ロマーリオさんから聞いたの。」


本当はイタリアへ戻らないでほしい。何処に行くにもあたしも一緒じゃなきゃ嫌。
ディーノしか見えないの。(気付いてよ、この気持ち…!)
気付けばいつも我慢していた言葉が、ぽろり。ぽろり。
一度零れた言葉は自分でも制御が効かず、涙と一緒に流れ出す。(嗚呼、ずっと我慢していたのに)


「…ぃ。」
「あ?」
「本当は…置いていかないで…ほしい。連れて行ってほしいよ…。」
「……。」

「好き、好き、好き、大好き。愛してるの。」
「…俺も…お前が思う以上に愛してるから。」
「あたしはねっ、ディーノの全部が好きなの…!!」

羨ましいくらいに整った顔、ふわふわの金髪、長い睫毛、華奢な腕、大きな掌。
全部が、好き。愛しい愛しいマフィアのボス。
もう身分なんて関係ない。
ぎゅっとディーノの胸に飛び込めばたくさんの優しくて愛しい言葉と、あたしの涙が再び溢れ出た。



「お願い、ディーノ。」










こ こ で キ ス し て 。


(とろけてしまいそうな甘い甘い口づけを、今すぐに)
(君の涙が止まるまで、俺はいつまでも此処にいるから)


fin.(2008.08.19 修正&アップ2008.12.30)
復活!はディーノが一番好き。勢いで書いたものを発掘&修正…だけどうまく纏まっていない。