この瞬間、食べた瞬間だけでもあなた様を手に入れられたらいいのに・・・。
Bitter Lover
これは、そう。
まだ、アレンが教団のエクソシストとして働いていなかったときの話・・・。
「アレン、クロス様はどちらに?」
「さん・・・お疲れ様です。師匠は・・・」
アレンが気まずそうな顔をするときはきまってクロス様は女性がたくさんいるところに行ってらっしゃる。
「あの、どうして、さんは師匠と共にいるんですか?」
「どうして・・・ねぇ・・・」
私自身もエクソシストで、決して教団が嫌いだというわけではない。
でも・・・
「私はクロス様を慕っているのよ。」
だから、傍にいたいの。とアレンに言うと、アレンは小さくそうですか・・・。と言った。
「!!!!」
クロス様の声・・・。
「大酒でも飲んでお帰りになったのかしら。」
「さん・・・」
「アレン、私はね、今でも十分幸せなのよ。」
クロス様の傍にいられて、何よりも幸せなの。
「クロス様、お帰りなさいませ。」
「・・・今日、女廊に行ったらチョコレート菓子ばかりもらった。酒が入ってねーのはやる。」
「ありがとうございます。」
「ったく、めんどくせー・・・何で今日はチョコレート菓子なんだ。」
「本日はバレンタインデーですから。女性は好きな殿方にチョコレート菓子を贈るのです。」
「、お前はねぇのか?」
にやりと笑みを浮かべて早く出せと促された。
この人は私の気持ちを知りながらも、いつも振り向いてはくれない。
「お口合うかは分かりませんが。」
アレンが一生懸命働いている間、私はチョコレート菓子作りに没頭していた。
「甘くなく、アルコールを多く含んでいます。」
私が差し出したチョコレート菓子を手に取り、一口、二口・・・
一切れ食べ終わった後に、指についたチョコレートを舐め取る姿が色っぽい。
「。」
「はい。」
「もう一つ、よこせ。」
「いくらでも。」
味はクロス様の口に合っていたらしい。
また一口、それを嬉しく思い眺めていたら口付けされた。
それは、深く、何かの底へ堕ちていく様な・・・・
「んっ・・・ふっ・・・」
アルコールとチョコレートの香りと味が口内を犯す。
「クロス様・・・」
やると言われて、渡されたのは一輪の薔薇。
「これは・・・」
「馬鹿弟子に聞いた。男はバレンタインデーに花を贈るんだと。」
綺麗な花には棘がある。だから、お前には薔薇が似合うと。とクロス様はおっしゃった。
バレンタインデーに殿方は好きな女に花を贈るのですよ・・・。
「クロス様・・・私はあなたを慕っております。どうか、生涯を共にすることのお許しを・・・」
「・・・頼みがある。」
「クロス様・・・?」
「馬鹿弟子を本部に届けてほしい。」
「っ・・・!?御一人で・・・御一人で、任務を遂行なさるのですか!?」
クロス様が教団から受けた任務は途轍もなく大きい物だ。
「私を連れて行ってはくれないのですね・・・」
ふわりと香る香りに涙が溢れそうになった。
「再び、共に過ごせる日が来ることを、祈っております。お気をつけて。」
交わした口付けは、まだ、チョコレートとアルコールの香りがした。
― end。
あとがき。
バレンタインデーです。
甘くないバレンタインもいいかなー思いまして。
師匠大好きです。
色っぽい話になったかな?
気に入ってるのは、指を舐めてる師匠ですね。
エロス!
瀬陰暗鬼。