ピンポーン・・・


「はいはーい。」

「よ。」

「久しぶり。でも来るんだったら連絡頂戴よ。」

「彼氏と一緒だった?」

「今日は一人です。」


今は夜。
俺は海に行くはずだったのに気づいたらの家に来ていた。
には俺ではなくて他にちゃんと男がいる。
でもは俺のことを拒んだりしない。
俺はソレをいいことにこうやって会いに来る。
一年前からには男がいた。
でも、俺らはこうやって前も今も会ってるんだ。


「今日はどうしたの?」

「海行こうと思って。」

「海?」

「そう。行かねぇ?」

「・・・・・行く。」


一瞬はためらった。
多分男のことを考えたんだろう。
いいよな・・・に思ってもらえるなんてさ。
まぁ、俺たちは一緒に海に行くことにした。


「俺と一緒にいて平気?」


一応聞いてみる。
平気じゃないとは絶対答えないだろう。
だって無理やり連れ出したわけじゃないし。


「今更何言ってるの?誘ったのは仁だよ?」


ほらね。
コロコロ変わる表情が可愛くてさ好きだよ。


―俺はが大好き。


「別に・・・ふと思っただけ。」

「ふーん。今日の仁変。」

「なんだそりゃ。」


実はちょっと不安になっただけだから。
とあいつの中がもし、俺のせいで崩れてしまったら・・・って考えただけだから。
本心では崩れることを願ってるけど、の泣いた顔は出来れば見たくないから。




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俺たちが海に着くころには、時刻は日の出の時間になっていた。


「もぅ、こんな時間かー。もうすぐ日の出だね。」

「こんなに時間がかかると思ってなかった。」

「考え無しに海に行こうとしてたんだね。」

「俺が考えてると思う?」

「思わない。」(笑

「車から出て外行かね?」

「いいよ。行こ♪」


外に出たら波の音が鮮明に聞こえた。
二人っきりで海・・・恋人同士ならどんなに幸せだろう・・・


「少し肌寒いね。」

「少しね。」

「まぁ、朝だから仕方ないか。」

「まだ日が昇ってねぇから夜ですー。」

「そう?もぅ、そろそろ昇るじゃない。」

「まぁな。」


こんなどうでもいい話をしてるうちに日が昇ってきた。


「綺麗・・・」


海での夜明けの色がこんなに綺麗だとは思わなかった。
と二人だからこんなに綺麗に見えるのかな?


「朝の海ってムラサキなんだな。」

「うん・・・なんかすごく綺麗だけど切ない色。」


そう言ったはすごく寂しそうに見えた。


「アイツとなんかあった?」

「え?!」


つい、聞いちゃったけど本当は聞かないほうが良かったかもしれない。
今までは俺といる時あいつの話は出さなかったし・・・


「仁には全部ばれちゃうんだね・・・あの人さ・・・浮気してたの。しかも何回も何回も。」

「そっか・・・」



―あんな奴やめて俺にしたら?



思ってるのに上手く言葉に出来なくて、それに俺が此れを言ったら絶対は困るから。


「別れようかな・・・って考えてるの。でもね・・・好きなの・・・あの人がすごく好きなの。」



―早く別れた方がいいよ。



言いたいけど言えない。
だってさ・・・こんなに寂しい顔をしてるにさらに寂しい顔をさせることになるから。
それに、こんな寂しい顔をしながらでもあいつのこと好きだっていってんじゃん。
こんなこと言えねぇし。


「仁に言って良かった。なんかスッキリしちゃった。聞いてくれてありがとね?」

「いつでも聞くから。」

「ありがと・・・」


何で抱きしめてあげられねぇんだろ・・・あんな奴のトコからを連れ去ってしまいたい。
いつか抱きしめてあげれる日が来んのかな・・・?
俺は待つよ。いつまでも待つよ。のこと抱きしめてあげれるその日まで。
でもこの思いは無駄なのかな・・・?
だってはあんな奴でも今も、昔も好きだから・・・そう思うと言いたくないけれど『さよなら』を言わなきゃいけない気がする。
だけど、俺は誰よりもが好きなんだよ。
あんな奴から連れ去ってしまいたいぐらい・・・。


「私ね・・・仁を好きになればよかったのにな・・・ってたまに思うんだ。」


んなこと言うなよ・・・。
俺の揺れてる心が急かされる。
好きって気持ちを俺はこれ以上止められるほど大人じゃないから。



気づいたらにキスをしてた。



「仁・・・?」


涙目になりながら俺の名を呼ぶを見て広がる罪悪感。
そして嫌われるかもしれないという恐怖。



―ねぇ、・・・ココがもし暖かかったら俺の方向いて笑ってくれる?



「なんでこんなことするの・・・?」

「ごめん」


軽蔑されたかな?
それでもいいや。
のこと諦められるから。


「仁・・・」


涙目になっている
目の前にいるはずなのに遠くに感じた。
さっき0になった距離の分、が離れてくような気がした。


「ごめんね?私が変なこと言ったから・・・」


謝らないで。
悪いのは俺だから。
お願い・・・謝るくらいなら笑って。


「俺はが好き。」


気づいたら本音が零れていた。
やっぱり困っているを見ると罪悪感がさらに募る。


「ごめんね・・・私ね、ちゃんとケジメつけることにするよ。
あの人とは好きだけど別れるよ。
仁とのキスを少しだけね嬉しいと思った自分がいたから。
デモね、仁の気持ちにはこたえられない。ごめん・・・ごめんね・・・。」


綺麗な涙を流しながら必死に謝るを見て嫉妬に似た感情も芽生えた。
でも・・・少し嬉しいと思ってしまう自分もいた・・・。
俺最低。


「仁・・・いつか私がちゃんとあの人のこと忘れられたらまたここに一緒に来ようね。」

「あぁ・・・」


俺は必死に俺が傷つかないような言葉を選んでくれてるに返す言葉が見つからない。
ごめん・・・・ごめんね?


「それまで、さようなら。」


そう言っては『タクシーを拾って帰るから』と行ってしまった。
結局俺はのちゃんと笑った顔を見れなかった。



―ここがもし暖かかったら笑ってくれてた?





_______





一年後・・・・




あの時からもう一年がたった。
からの連絡は無い。
でも、たまに海に来ることにしてる。
もしかしたらが居るかもしれないから。
俺、あの時のことを諦めてたはずなのに今でもを愛してるよ。
そして、ここで目を閉じるとあの時のこと、あのトコの思い思い出すんだ。
今でも覚えてるってことだよね?
いつになったら会えんのかな・・・・?





―あの日見たムラサキをまた見に行けたらいいな。





あとがき

ムラサキでーす♪
ご希望があれば続編が書ける小説になっております。(笑
中途半端な終わり方でスミマセンね。
でもコレくらいがいいかなーって思ったんですよ。
続編は喜んで書くので拍手かBBSで。(笑
ちょっと仁の馬鹿さをどこかに飛ばして書いてみました。
前回の仁は馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿だらけ☆だったので;;
こういうシリアスの仁もいいかなー♪と。
あんまり悲恋とかシリアスは得意じゃないんですけどなんか最近こういうのが得意になってしまった。(ギャス!!
では。
あまり長い後書もうっとおしいのでココで。
読んでくださり有難う御座いました。

瀬陰暗鬼

※最後の部分、都合によりカットをいたしました。ご了承ください。(鳥羽蒼炎)