空と人・・・
それは写真におさえてしまえば一緒だけど、おさめる前は違う。
私はあのときから人を撮ってない。
079.写真
〜君と空と私〜
「Hello?」
「Hello.Who?」
「Jin.Jin Akanishi.」
「Japanese?」
「Yes.Are you Japanese?」
「Yes.What?」
「日本語でしゃべっていい?」
「もう話してるじゃない。」
空を眺めていたら少年でも、青年でも通用しそうな人に話しかけられた。
どうやら、日本人らしい。
「俺、今日暇なんだけどさ、暇?」
「見てわかんない?」
「暇そうだね。あ、それカメラ?自前?」
ずかずかと人の領域に踏み込んできやがった。
「自前。私、カメラマンだから。」
「まじで!?俺、女のカメラマンさん初めて!!いつも男ばっかだしさあ。」
女のカメラマンは少なくない。
ただ私みたいなフリーは珍しい。
「俺のことわかんね?」
「知らない。芸人とか?私、5歳からこっちだから日本のそういうのわからないわ。」
「だから反応薄かったんだ?納得、納得。俺、ジャニーズの今売り出し中のアイドルなの。」
「見えないわね。まあ、疑う理由はないし、信じましょう。でも、その芸能人がロスで何をやってるのかしら?」
「休業中なのでーす。」
「あっそ。で、何のよう?」
「暇なら付き合ってほしいなあって。」
「いいよ。」
だって面白そうだし、暇つぶしにならなりそう。
「決まり。まず、飯にいこ!!」
「めんど・・・」
「飯を食うのが面倒ってよくないし!!」
人間やる気になればきっと光合成だってできるさ。
*
「久々に運動したから疲れた。」
「カメラマンは体力勝負でしょ!?」
「いや、私はフリーだから。」
フリーは楽。
何かに縛られるわけでもなく、撮りたい時にとってあとは送るだけ。
「写真見せてよ。」
「いいよ。ポラならあるから。」
一枚一枚写真を見るたびに楽しそうな顔。
「これきれー!!どこ?」
「沖縄。」
「アメリカだけじゃねぇんだ?」
「まあ、たまに別のとこも行くから。」
「でもさ・・・景色ばっか。人は?」
答えられない。
人は撮らないんじゃない。
撮れないんだ。
「おーい、どうかした?」
「人は、撮れないの。」
「撮った事あんの?」
話が核心に迫っていくのが嫌だ。
「ない。人を撮った事は全くない。」
「んじゃ、被写体になるからとってよ。」
無理だ。
撮れない・・・でも、カメラを構えた。
こいつは撮らないと納得しないタイプだと思ったから。
「はーやく!」
「う、うん。」
手が震える。
怖い。
「?何、震えてんの・・・?」
「嫌・・・」
「泣くなって・・・何かあったの!?蜂?」
涙が止まらない。
私の中にこんなにも恐怖心があったんだ・・・。
「違う・・・怖いの。人を撮るのが怖いの。」
だから人は撮れないんだって。
伝えたら上からごめんという言葉が降ってきた。
抱きしめられる腕のぬくもりに懐かしさを感じた。
「ごめん、無理言って。」
「いや・・・私こそ、嘘ついてごめんなさい。」
撮ったことがないわけじゃない。
撮った事はある。
昔はちゃんと人も撮れていた。
「二年前まで、人も普通に撮れていたの。」
「二年前・・・?」
「彼氏が私の被写体だった。
でも、ドライブ中、事故で死んだ。私がカメラマンってことから少しでも現場写真を早く撮ってほしいので撮るように言われた。
血の海、壊れた車、死んだ最愛の人。様々な物を撮った。
でも、彼の死んだ顔をとった後、私は怖くて人を撮れなくなった。」
今日会って間もない人に話す内容じゃなかった。
「じゃあ、リハビリしよう。」
は?
何言ってるの、こいつ。
「俺、に撮って貰いたい。だから、リハビリ。」
我侭だ・・・。
「ほら、カメラ持って。ごろーん。」
カメラを持って横になった。
「空、きれーでしょ?」
「うん。すごく、綺麗ね。」
「レンズ覗いて。」
「うん・・・」
「シャッター5秒前、4,3,2,1・・・」
カシャッ!!
「仁!?」
「いえーい、成功!!」
シャッターを切る瞬間、仁がレンズ越しに見えた。
出てきた写真には仁と綺麗な空が写ってた。
「綺麗・・・・」
「俺が?」
「うん。」
少し照れた仁を見て、和んだ。
なんか、この写真を見たら人も撮れそうだ。
「仁、ありがとう。私、人をもう一度撮れそうだよ。」
「よっしゃ、もう一枚撮ろ?今度はも。」
「空が入らないじゃない。」
「入れんの!プロっしょ?」
「仕方ないなあ・・・。」
カシャッ・・・
写真にはちゃんと君と空と私が写っていた。
end。
あとがき
かわいい感じと生々しい感じをミックスしてみました。
最初の英語は・・・会話になってねぇ。(汗
もうしらね。
寂しさを紛らわすために書いたもので、すみましぇん。
瀬陰暗鬼