近いです。近すぎるんだよ…!!!


「え、えっと、あのう…。」
「あ?」
「いや…その…。」
「言いたいことがあるならさっさと言えよ。」


「…このシチュエーション、なんですか。」

高杉君。



背中越しに感じるひんやりとしたコンクリートの壁。
顔の横にはあたしが逃げ出してしまわないように腕が置いてある。
そして目の前に…校則違反のYシャツを着ている不良。




「ったたたたた高杉君っ、タチの悪い冗談は勘弁してくださいお願いします。」
「タチの悪いだァ?はっ、どこら辺がだよ。」
「いやいやタチ悪いですよ本当に。だって私の心臓爆発しそうなんですよぱーんってさ。」


あーもう。さっきから心臓がうるさい。(本当に爆発してしまえ)
あれ…おかしいなあ、銀八に頼まれて彼を教室に呼び戻すだけだったはずなのに。


「安心しろ、心臓は爆発しねーよ。」
「知ってますよそのくらい!」


会話の度に、高杉君が何かを言うたびに一段と心臓が跳ねるのは、なんでだろう。
原因は、わかっている。だけど自覚したくなくて…。



よォ…俺のこと好きだろ?」
「ばっ…!!」



はっきり言って図星。
そう、あたしは高杉君が好きなんだ。1年の時から。
恥ずかしい話、入学式の日に一目ぼれ。
クラスだって3年までは違ったから、会話なんて今日が初めて。
(…恋っていうのはあたしには似合わない。)



「な、何を言ってるの?ちっ違いますよ…誰が…。」
「バレバレなんだよばーか。」


人が自覚したくなかった現実を気づかせた挙句、ここまで暴言吐かれたらいくら好きな人だからって腹は立つ。


「っ…銀八せんせえええええ!!!助けっ…」
「うるせーよ。」



むぐ、と声が止まる。否、止められた。

機嫌の悪い高杉君の声がした後、一瞬にしてあたしは動けなくなってしまった。
(無意識のうちにあたしは彼の制服の袖を握っていた。)





ちゅ、と小さな音と共に解放された唇。





どうしよう…。
今のが、キス…ってやつなんですか…?



「…最悪…。」
「初めて、か?」
「高校3年生にもなってキスの1つもしたこと無いガキですみませんね…。」


制服の袖から手を離し、足元をぼんやりと見つめた。
視界の端に映る彼の袖は、皺が出来ている。
あーどうしよう、泣きたい。



「まあ俺にとっては好都合だけどな。」
「それってどういう意味ですか。」
「つーか敬語止めろや。」
「…うるさい…。」



、」


突然名前を呼ばれ、驚きのあまり顔を上げてしまった。




「愛してるぜ。」







そう言ってニヤリと笑った彼を不覚にもカッコいいと思ってしまった。
これはもしかしなくても両思いなのだろうか。

fin.(09.10.03、up10.03.11)
→大人の階段登ったヒロインちゃん。屋上って最高のシチュエーションだと思います。