「…この戦、いつ終わるんだろう…。」
天人との戦もそろっと終わりへと動き始めた。
きっと、私達は負けてしまう。(既にわかりきっていた、こと。)
天人を斬った代償に、私達の大切な仲間もたくさん死んでしまったから。
だからと言って泣いている暇はない。志半ばで散った仲間たちの分まで戦うの。
「そんな事、俺ァ知らねーな。」
独り言に律儀に返答してくれたのは、私の隣で空を見上げる高杉晋助。
「そうだよね…。」
「だが、俺らの負けは決定的だ。」
「…わかってる。」
ぎゅっ、と愛刀を握り直し、空を見上げた。
曇天を飛ぶのは天人の船。気分が悪い。
「幕府の連中が、天人と共に攻めてくる…な。」
「…え。」
幕府。
それは私達が守ろうとしていたもの。
その目的を失った今、どうして戦うんだろうか。
とうとう私達は孤独に戦う事になったらしい。
「、立て。」
「銀時達と合流、するんでしょう?」
「あァ。」
必要以上の物音を出さないようにに静かに立ち上がり、先に走り始めた高杉の後を追った。
林の中をひたすら走り続ける。
時折、後ろに注意を向けるが何も無い。
どのくらいの距離を走ったのかは定かではないが、道の先が明るくなってきた。
林を抜けても走り続ける。
そして視界に飛び込んできたのは、焼け野原。
「っ…まだ、走る…の…っ?」
「息上がるの早ェな。」
「ねっ…話…!」
必死に呼吸を整える私の横、涼しい顔をした高杉。
(持久力有りすぎ…!!腹立つ…)
「、見ろ。」
「…は…?」
呼吸が大分整った頃、高杉がほんの少し嬉しそうな顔をして前を見た。
同じ方向を見ると、見覚えのある3人が。
「銀時達だ。」
「本当っ…良かった…!」
「泣きそうな顔してんじゃねーよ。」
「してませんー!」
嘘。本当は泣きそう。泣いてしまいたい。
あれだけの敵の中、無事なんだもの。
こちらへ走ってくる3人がぼやけて見えてきた。
(泣きそうになるあたり、私も女なんだなーと思ってしまう。)
咄嗟に顔を隠すが、指の隙間から涙が零れ落ちていく。
「…っ…。」
「結局泣いてんじゃねェか。」
「うるさい…だって、だって……。」
只、止まらない涙と震える肩。
地面に落ちていく涙が染みを作り出してきた。
「チッ…世話焼かせる女だな。」
舌打ちと聞こえた独り言。
(別に世話を焼かせた覚えはない。私が勝手に泣いてるだけでしょう?)
「てめーは、銀時達がそんな簡単に死ぬような奴だと思っていたのか?」
「違っ…。」
「じゃあ、どうして泣くんだよ。」
「そんなの、わかんない…。でもっ、皆が…無事、だから、…嬉しくって…!一日でも、早く、…会いたかった、から…。」
まとまりの無い言葉が口から紡がれていく。
次から次へと止まらずに紡がれるものだから、私自身、どういう意味なのかが全くわからない。
「明日はどうなるかなんてわからないっ、でしょう…?。もしかしたら死んで…しまうかも、しれないじゃない……!!」
「あれ、どーしては泣いてんの?ほら、銀さんに言ってみなさい。…どうせ高杉だろ?この野郎、高杉てめー。」
「…え…?」
「勝手に決め付けるんじゃねェ。こいつが勝手に泣き出しただけだ。」
私の頭上から陽だまりのように暖かい声が聞こえてきて、他愛のない会話が繰り広げられる。(嗚呼、いつもの声だ。)
そっと顔をあげると、ニコニコと笑う銀時がいた。私の目線に合わせてかがむと、くしゃくしゃと頭を撫でられた。
「ちょっと!何するの…。」
「ん?別にー。…ほら、笑いなさい。折角の可愛い顔が台無しです。」
「よ、余計なお世話…!」
さらにくしゃくしゃと撫でられた頭。あれ、でも…。
「高、杉…?」
斜め前を見上げるとなんだか優しそうな顔の高杉。
「…今を生きているんだ、死ぬ、だなんて考えてるんじゃねー。」
「ごめんなさい…。」
「こらー、高杉。また泣いちゃうでしょ?!」
何故か慌ただしくなる銀時と『関係無い』と言わんばかりにあたしの頭をくしゃくしゃと乱暴に撫で続ける高杉がなんだかとても戦場と不似合いで笑えてきた。
「ふふ…。」
「「あ。」」
「…?」
「うんうん、やっぱりは笑っていたほうがいいね。なー高杉。」
「……。」
「ごめんね、皆に会えたのが嬉しかったの…もう、泣かないよ。」
人差し指で涙を拭った。きっと、目は真っ赤だろう。
皆がいるから、私は戦えるんだよね。
もう大丈夫だよ。ありがとう。

明日も明後日も、来年も再来年も…皆で笑っていこう。
雲の切れ間から差し込む日の光が、私達を照らした。
fin.(2009.07.05、up2009.09.28)
→すいません攘夷ねつ造。あたしも高杉に頭撫でてもらいたいです。