「竜ーっ!!」





絡みつくように竜の腕にくっつく女がいる。

俺は吐き気がした。

その女は俺が振った女だったから。



そして、その女は俺が今、好きな女だから。










___________










「はーやと。」





幼馴染、永遠に破れない壁が目の前にあった。
だから、俺もタケも竜さえもその壁を破ろうとしなかった。



その壁を破ったのはもう一人の幼馴染だった。





「ねぇ、明日暇?」

「ごーこん。」

「嘘吐き。竜に聞いたら暇って言ってたよ。」

「何で竜が俺の予定を知ってんだよ。」

「竜は隼人と違って賢いからだと思うよ。」

「それ、どういう意味だよ!!」

「あー、隼人のおこりんぼ。」







小さいころからずーっと一緒に四人でいた中の一人。



同じ壁を持つ人。





「ねぇ、明日さ、付き合ってよー、買い物!!」

「いかねぇよ。女友達といけよ。」





誰にでもこんな態度。

当たり障りなく、敵意がない。
そして、愛想がいい。





「私、隼人が選んでくれた服、はずれがないから服を買うときは隼人って決めてるの!!!」





勝手に決めんなよ。といいたいところだけど・・・


仕方ないか。
どーせ、暇だよ。





「わーった、わーった。」

「やった!じゃあ、明日駅ね。10時!!遅刻しないでよ?」

「おー。」





また明日ー!!と去っていく姿を見て、どうして彼氏を作らないのかと不思議に思う。



それは俺らにも言えることだけど。










*








「隼人!遅いよ!!」

「悪ィ、寝坊。」

「だから、昨日遅刻しないでよ?って言ったのに。」





今日、が着ていた服は前回に買い物に行ったときに買ったものだった。





「似合うな、それ。」

「でしょ!だから隼人が選んだのは外れないって言ってんの。」

「今日は何?」

「ワンピース!!!」










*








「新作ワンピ、大量ゲット♪」

「てか、その金はどうしたんだよ。」

「バイトしたんだよ。家で。」





こいつの家は昼は喫茶店、夜はバー。





「ね、隼人。」

「ん?」

「私たち、ずーっと幼馴染なのかな?」

「そうじゃねぇの?」

「四人でずーっと一緒?」

「うん。」





言い方に何かが引っかかる。



様子がおかしい。





「どうしたんだよ。」

「私、私は隼人のことが好きだよ。友達とかそうゆうのじゃなくて、一人の男の人として好き。」





壁が崩れた。


俺は・・・でも・・・





「このまま幼馴染じゃ嫌だよ。」





の気持ち・・・。


でも、俺は・・・応えられない。





「ごめん・・・。」





壁を崩すのが怖いんだ。





「いきなり、んなこと言われてもさ・・・。」





幼馴染の時間が長すぎたんだな。





「そっか・・・隼人にとって私は一生幼馴染なんだね。」





別にそんな顔しなくてもいいじゃんか・・・。





「でも、私はもう一緒にいられない。どうあがいても隼人への気持ちは消せないよ。」





仕方ないとおもってしまう。





「隼人、今日はありがとう。私・・・もう四人でいれないから。」





去っていく背中から目を離せなかった。



その後からか、が俺を避ける日々が続いた。

当の俺は何故かずっともやもやしていた。
今までずっと隣にいた奴がいない。



ただそれだけなのに・・・。





「隼人。」

「ん?竜か。」

「お前、あいつのこと振ったんだって?」

「あぁ。振った。俺にとってあいつは竜や、タケと一緒なんだよ。」

「じゃあ、何で最近変なんだよ。」

「んー・・・この辺がもやもやしてんだよ。」

「・・・バーカ。」

「は!?」

「お前は馬鹿だ。」

「何だそれ!!」

「気づくころには遅ぇよ。」

「ちょっ!!竜!?」





考えてみた。


に無償に会いたくなった。

避けられんのが辛くなってきた。


好きじゃねぇ女を俺がずっと傍においておくなんてありえない。



そう、ありえなかいんだ。





「ゴメン・・・。」





桃女に急いだ。



しかし、俺が見た光景は竜とがキスしているところだった。

きっと竜が壁を崩したんだろう。



俺はどうすることも出来なくなってしまった。





「隼人・・・?」





・・・ごめん。





「や、竜が桃女に行くのが見えてさ。」

「そ、そうなんだ・・・。」

「隼人。」

「何?」

「俺ら付き合うことにしたから。」





何の言葉も出なかった。





「そっか・・・」










__________










そして今に到るんだ。



買い物も、みんな、みんな竜にとられてしまった。










029.あのときああしていたならば。










壁を崩していたら、きっと俺の隣に君はいた。










あとがき。

悲恋もたまにはいいですよね?
こういう最後にタイトルでおまけつきっていう形式の文章は好きです。
結構書くこと多いですね。
好きなんで。
竜は気兼ねなく行くタイプ。
隼人はお子様っていうのは結構頭の中にできている設定のうちです。
勝ち誇った竜の顔を想像して楽しんでください。

瀬陰暗鬼