ふと思ったこと。
024.もしもの話。
「ねえ、麗。」
「ん?」
「もしもの話、なんだけどさあ…。」
ソファの端っこでアイボリーのクッションを抱きながら、そっと聞いてみる。
「もしもだよ?私が、「ダメ。」
「…まだ何も言ってない。」
「どうせ『私がいなくなったらどうする?』って聞くつもりでしょ?」
あれ、私…前にも聞いたのかな?
麗は窓の外を見つめた後、私の髪を手で梳きながらぽつりぽつりと喋りだした。
「俺は、がいなくなるなんて考えられないし、考えないからね。」
「うん。」
「俺がいるもん、はいなくならないでしょ。」
「うん。」
「の居場所はココ。…だからそんなこと言っちゃダメ。」
「…うん。」
一瞬、とても悲しそうな目をした麗を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
なんでこんなこと考えてしまったのだろう。
ココロが痛くなった。
「う…るは…。ごめんなさい。」
「…約束してくれる?もうそんなこと言わない、って。」
「…もう言いません。」
麗は私の言葉を聞いた後、そっと私の肩を引き寄せた。
麗に寄りかかると、温かみを感じる。そして、小さく鼓動も聞こえた。
そのまま体中の力が少しずつ抜けていって、抱きしめていたクッションが落ちたところで意識が消えた。
+ + + +
「…?」
「…ねえ、?」
遠くで声がする。声は…麗だ。
「ん…んー…?」
「夕飯どうする?」
「…は?だって、まだ…。」
窓から差し込む眩しい橙色。
「…夕方?」
「よく寝てたもん。」
「寝てた?」
「うん、ぐっすり寝てたよ。…ちなみに俺も。」
「ごめん、ずっと寄りかかってた…。」
「の寝顔堪能できたしいいよ。」
「…。」
時計を見たら最後に時計を見た時より三時間ほど経っていた。
今は午後六時を過ぎたところ。夕焼けが美しい。
手を伸ばして携帯を手に取った麗。
ボタンを押すたびに(新着メールでも見ているのだろう)くるくる変わる表情。
私はそれを見ながらまた濁り始めた意識を取り戻そうとする。
「…ルキ、葵くん、れいた、戒くん…メールが一件に着信も一件ずつ…。」
「仕事とか?なんか緊急??」
「違うみたい。…夕飯というか飲み会のお誘い。」
「麗は行きたい?」
「どっちでもいいけど、は?」
「夕飯の支度めんどくさいし、楽しそうだから行きたい。」
「よし、決定。」
じゃあ、準備しないとね。と言って麗はソファから立ち上がった。
目が覚めてきた私も続いて立ち上がった。
(その時に「よいしょっ」って言ったら笑われた。)
「あのさ。」
「?」
「じゃあ、もしも俺がいなくなったらはどうしますか?」
「絶対に探し出すよ。」
もしも知らない女といたら二人とも殴ってやる。
「…さすが。」
「でも、見つからなくても私はずーっと麗のこと待つからね。」
だって私には貴方以上の人なんていないから。
私は麗の隣からいなくならないし、麗も私の隣からいなくならないで。
「早く支度しなきゃ。」
「あと十分でしてね。」
「無理。」
fin.(2007.08.22)
→不完全燃焼気味…。御題からちょっと脱線しちゃった。