桜の花が散る中、私たちは出会った。
007.最後の春
「立てないの?エクソシストさん。」
「・・・違います。」
「へぇ、こんなにAKUMAに囲まれて、まだそんな強がりを言えるんだ。」
「まだ、そのAKUMAを壊す手立てはあるもの。」
イノセンス、第二開放。
Mirror.
私の目に映されたAKUMAの大軍は一瞬で姿を消した。
ただこの力はマイナスが大きい。
ガクンと膝が音を立てて、私は動けなくなった。
「殺せば。」
目の前にいるノアと戦う力は残されていない。
「やだ。」
拍子抜けの返事が返ってきた。
「何で!?」
「何、死にたいの?」
死にたくなんかない。
私は・・・死にたくなんかない。
だって・・・
「俺はお嬢さんのこと、気に入ったんだよね。」
ノアに気に入られても嬉しくない。
それに、気に入ったから何なのよ。
「選べ。他のエクソシストを犠牲にしてこのまま生きるか、それとも鳥籠の中で暮らすか。」
こいつは本気だ。
逃げることは許されない。
仲間を犠牲にするなんて私にはできないから。
「鳥籠の中を選ぶわ。」
にやりと笑った顔は印象的だった。
「三日後ここで待ってる。別れでも言ってくるといいよ。」
「そうね。また。」
______
それからすでに二日が経った。
一番、話したい、伝えたいことがある人はいなかった。
任務か・・・
「何つったってんだ。」
「神田・・・今、時間ある?」
*
「ねぇ、神田・・・二日前、すごく綺麗な桜を見たわ。」
桜を教えてくれたのはあなただった。
春に咲く、美しい花。
「神田・・・ねぇ、神田・・・私、あなたが好きよ。」
「!?」
「だからね・・・だから・・・何があっても死なないで。生きていれば必ずまた会えるから。絶対に会えるから。」
「・・・?」
「私は・・・また会いたいから・・・。」
きっと、どうして私がこんなことを言うのか、神田はわかっていないだろう。
でも・・・・
「愛してる。」
_____________
三日前、あんなに美しいと思った桜を今、美しいと思えなかった。
「待ってた。」
私はこいつの手をとる。
「早く、行きましょう。」
辛くならないうちに・・・
二度と桜を見ることはできない。
そう、感じた刹那。
―神田、愛していたわ。・・・また、会いましょう・・・
これが最後の春で、その最後の春が過ぎてゆく気がしたんだ。
End
あとがき。
意外と気に入ってます。
ティキポン。
あ、神田夢ですよ?
こういう感じも可愛くていいかなと思っています。
瀬陰暗鬼