「暑い、ねえ暑いよダイゴ」
「暑い暑い言ってると余計に暑くなるよ」
「だって暑いんだもんねえ暑いよ暑いよー…溶ける…」


ソファでぐったりとしているを見ていると、正直疲れる。
どうして彼女は夏休みに入ってからというもの毎日毎日僕の家へ押し掛けてくるんだ。


「じゃあ溶けてしまえば?」
「…酷い…ダイゴはあたしの事嫌いなんだ…」



物事を大きく捉えるのはやめなさい。
そう言うと彼女は「ダイゴってばお母さんみたい」とへらりと笑った。(…お母さん?)



「僕は正論を言っただけなんだけど、どうして君の母親になるんだい」
「あたしもダイゴがお母さんだなんて嫌だよ。…というか今頭使うと余計暑くなる…。ねえ、」
「これ以上エアコンの温度は下げないよ」
「ちっ」



ソファに投げ出した足をじたばたと動かしては何かを訴える。
ごめん、さすがにわからない。



「そんなに暑いなら、わざわざ僕のところまで来ないで家に居ればいいんじゃないか」
「えー…だって一人で家に居たってつまらないし、学校の課題のレポート出来ないし」
「僕は君の家庭教師じゃないんだけど」
「知ってるよそれくらい」



まるで自分の家のように寛ぐ彼女の行動にいちいち口を出していると疲れてくる。





「…そんなに難しいレポートなの?」
「あたしにとってはかなりの難題でございます」


レポート課題が書いているプリントを手に取って目を通した。


「…なるほど」
「難しいでしょ?」
にとってはね」
「ダイゴひどい」


プリントを彼女に返した。


「大丈夫、なら出来るよ。」
「…それ、信じるよ」
「むしろ信じてほしいな。…そうだ、夕方までにレポートを終わらせる事が出来たらご褒美をあげよう」
「ご褒美?」
「僕が叶えられる事なら1つだけ、ね。」

「…よし、がんばります…!」





(…まったく、世話のかかる子だ…)(ふふ、やっぱりダイゴの家に来て良かった!大好き!)

fin.(2010.08.11)