「しーんーすーけー!」
「うるせえ」


名前を呼ぶとぴしゃりと一言返された。
へ、返事が「うるせえ」って…。


「…ひどい…」
「今更気にしてんじゃねーよ。いつもだろう?」
「…晋助、わたしの事嫌い?」
「どうしてそうなる」


うわ、変な顔された。


「で!今日は晋助に伝えたい事があるの」
「なんだよ」
「今日は何の日でしょうか?」
「…知らねえ」


一応考えるそぶりを見せたが、わからなかったようだ。
本当に覚えが無いのかこいつは。


「8月10日ですね。ハトの日です…じゃなくて」
「さっきから一人でぎゃあぎゃあうるせーな」
「今日は晋助の誕生日、でしょ?」
「……」


思い出したらしい。
包帯で隠されていない片目を少し見開いてこちらを見た。


「…っクク」
「な、なによ…」
「それで、祝ってくれるのか?チャンよォ」


何故だろう、何故か、腹が立つ。
いつもこんな感じなのはわかっているのに。


「…生まれてきてくれて、ありがと。」


駄目だ恥ずかしい。…部屋出て少し冷静になろう。
そう思って立ち上がろうとすると、腕を掴まれた。


「何処行くんだ」
「べ、別にっ何処でも良いじゃない…」
「行くな」
「え、」
「行くんじゃねェ。此処にいろ」
「え、あ、…はい」


そのままストン、とその場に座り込む。(その場=晋助の目の前)(ち、近い…)


「良い子だ」


不覚にもドキっとしてしまった。晋助の分際で…!


「どうし「
「…何」
「目、瞑れ」
「なんで」
「さっさと瞑れや」


このまま反抗すると本気で怒りそうな雰囲気を出してきたのでおとなしく目を瞑った。
我ながら正直すぎると思う。
一体コイツは何をするつも…り………。


…………!



「わああああああああ!?」
「うるせェ」
「だって、だって!!!」
「なんだよ」
「付き合っても無いのにキスとか最悪じゃん」
「意外と純情なんだなテメェ」


鼻で笑われてしまった。


「馬鹿にしないでよ…結構ショックなんだから」
「ハッ正直に目なんて瞑るからだろ?」
「…この為だったのか……」





「まあ、ありがたく貰っておくぜ」





わたしを置いて、立ち上がった晋助はひらりと手を上げて部屋を出て行った。





fin.(2010.08.10)
両想いだけど付き合っていない2人のお話。(きっと高杉は誕生日を忘れたフリしたんだと思う)
高杉お誕生日おめでとう。

title by 【 206骨 】