熱帯夜、だ。
暑くて、ジメっとして。
汗のおかげで気持ち悪い。
最近の疲れがどっと押し寄せたせいか、今日は早くベッドに沈みたくなった。
しかしこの暑さのせいで頑張っても眠気がやってこない。
エアコンをつければ手っ取り早いのだが、今から使っていると夏は乗り越えられないと思う。
着替えようと思ったけれど結局は変わらないだろう。
汗で髪が首筋に貼りつく。気持ち悪い。
ベッド脇に無造作に置かれたデジタル時計を見れば、22時18分の表示。
今からシャワーを浴びても睡眠時間はたっぷりとある。
バスタブに湯を溜めなければ大丈夫なはず。
そう思って、ふかふかベッドから抜け出し、汗により身体にぴったりとくっ付いているTシャツを脱ごうとした。
中々しぶとい。只でさえこの暑さでイライラしているというのに!
短気な私にとってここまでイライラを我慢出来るのはすごい事だ。そろっと限界だけど。
やっとのことで胸の下辺りまでTシャツを捲くった。
もう少しでシャワーを浴びれる…!と、ほっとしたのも束の間。
ガチャ、
……え?ドアが、開いた?
「………。」
「………。」
ノックもせずにいきなりドアを開けたのは翼だった。
そしてあたしを一瞥した後、ドアを閉めた。
ぽかーんと一部始終を見た直後、ある事に気づく。
今の私の状態…そうだ、着替えの途中だったじゃない。
全部脱いでなくてよかったと安心したが、よくよく考えてみると胸下から腰までは無防備だったわけ、で。
「馬鹿!」
声を張り上げて、ドアの向こうの翼に叫ぶ。(もう時間なんて関係無いわ!)
叫んだあと私は、先ほどまであれだけ苦戦したTシャツをするりと脱ぎ捨てタンクトップを着た。
そして、私は彼が居るであろう、廊下へ出るためにドアを開ける。
「あ、…、その…すまない。」
「馬鹿。変態。最悪。」
「だから、悪かったって。」
いつも冷静な翼が顔を赤くして慌てているのがとても面白くて、怒る気が無くなってきた。
(斜め下へ視線を落とす彼が一瞬女の子に見えたなんて言えない)
「…もういいよ。」
「……。」
「次からはちゃんとノックしてから入ってよね。一応私だって女の子なんだから。」
「ああ…。」
相変わらず顔の赤い彼が可愛らしく見えて笑みが零れる。
「へへ、翼かわいー…」
「なっ!」

fin.(2010.08.06)
勢いです。タイトル考えるのが辛かった…。